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「法輪」がびゅんびゅん飛び回る

「当日、会場の近くで、空を飛ぶ飛行機から赤い光が伸びている写真が撮れたんです」

「なるほど。会場のテレビカメラの画面にも「法輪」がびゅんびゅん飛び回る様子が映っていたようですからね」

 参加者たちに、こうした話を奇異に感じている気配は感じられなかった。私がかつて僧侶だった時期に身近に身近に接した経験がある、日本の伝統仏教の僧侶や檀信徒たちとはちょっと違う雰囲気だ。

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 あえて肯定的な表現を用いて描写するなら、法輪功の集会は新鮮な信仰の熱気に満ちたコミュニティだった。歴史が比較的浅い教えなので、日本の伝統仏教のように惰性的に信仰を維持しているだけの人が、まだほとんどいないのだ。もっとも、そうした純粋さゆえに、一般社会ではなかなか信じてもらえそうにない神秘主義的な奇跡体験の話についても、素直に受け入れる素地があるようだった。

 ただ、法輪功が修煉者を惹きつける理由は、こうしたオカルト色や、後述するような政治的な要素だけではない。

「法輪大法には五つの功法があるんです。今日は初めて来られた方もいますから、おさらいをしてみましょう」

 休憩を挟んでから山田がそう話す。「初めて来られた方」とは、もちろん私のことだ。

 第一式の功法は、千手観音が手を広げるイメージにもとづく「佛展千手法」だ。

2019年9月15日の香港島・銅鑼湾。香港デモ現場で新聞を配る法輪功の修煉者。反共活動がおこなわれている場であれば、どこでも姿を見ることができる(筆者撮影)

 まずは直立して結印してから、両手を上にあげて腰を伸ばす「弥勒伸腰」をおこない、手を下ろしていく「如来灌頂」に移る。合掌後に胸元で気を練り、右手(女性は左手)を胸の前に置いて、腕を斜め上に伸ばす「掌指乾坤」。そして両腕を身体の左右に水平に伸ばす「金猴分身」と、前下方へ伸ばす「双龍下海」。さらに両腕を横斜め下に伸ばす「菩薩扶蓮」に続いて、身体の後方に伸ばす「羅漢背山」。両手を前方に向けて壁を押すようなポーズを取る「金剛排山」をおこなったら、両手のひらをいったん丹田の前で重ねて、最後に結印――。

 これで第一式功法の一セットが終了だ。さらに第二式・第三式と、別の動作のセットが第五式まで続いていく。法輪功の修煉には、それぞれの型の「決めポーズ」を取る際に筋肉を数秒間突っ張らせ、それから脱力させるという特徴があった。