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草下:それは覚せい剤の妄想ですか。

汪楠:そうですね。シンナーの場合はわりと、高いところから飛び降りたり、ゼロ戦が襲ってきたりといった妄想でした。その妄想のせいで、飛び降りた子は周りに何人かいますね。自分はシンナーのときはそんなに幻覚を見ていないんですけど、覚せい剤の場合はひどかったですね。

草下:薬が抜けるときですね。

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根性ややる気で薬物はやめられない

汪楠:薬物ってやめるのは本当に大変なんですよ。根性とか本人のやる気の問題じゃなくて、ケミカルで、直接脳に効きますから。しかも経験者に言わせると、薬物とセックスと一緒にくっついた快感は、他にそれ以上のものを得られない。もっと楽しい代替品がない以上、やめるのは相当大変です。

写真はイメージ ©iStock.com

草下:セックスと薬物の組み合わせだけはやらなければよかったと後悔している方は、かなりいますよね。

汪楠:人間を駄目にするっていうのは、時間も守れないし、友達も失う。例えば、夫婦で頑張って2万円で買ったビデオデッキを、旦那が薬の代金欲しさに、1週間後にたった3000円で売ってしまう。時間を守らないから働けないし、お金がなくなると友達に借りて、周りの人間関係も壊す。周りの人間関係が壊れると、生きることも大変です。それでいて刑務所に入ると、刑務所の中はお酒もたばこも何もない代わりに、精神安定剤や睡眠導入剤といった強い薬がいっぱいある。そういった薬に依存しちゃうんですよね。だからといって何も与えずに放置すれば治るかというと、そうでもない。ケアは大変です。

金もうけが喜びとなって薬物依存から脱却

上出:汪さんはどういう風に薬物依存から抜けられたんですか?

汪楠:薬物をやっていた時期の後に、めちゃくちゃシノギがうまくいった時期があるんです。はっきり言って、薬物より金もうけのほうが面白かった。自分が考えた案がどんどん形になることが喜びになっていたんですね。

©藤中一平

上出:報酬を得るゲームのようですね。

汪楠:薬物がひどいときは町をうろうろして、行くとこなくてサウナに行って。サウナで朝6時ごろ寝ていたら、業務用掃除機の音がすごい気になっちゃってうるせえって暴言を吐いたり。覚せい剤を使用しているときは、暴力性と猜疑心でめちゃくちゃだから、俺に何か悪意があるんじゃないかと思ったりしたんです。

上出:いいことないっすね。

草下:快楽のとりこになってしまうんですね。