ビビビビビと放った上沢光線
だけど、僕がビリビリしびれたのはそんなとこじゃないんだ。
4回裏だよ。上沢は佐野恵太四球、宮崎敏郎&倉本寿彦連打で1死満塁をつくってしまった。打順は7番田中俊太、8番山本祐大と下位にまわるが、ここはビシッと締めたいところだ。まぁ、いわゆる「ギアを上げる」場面なんだけど、これが力(りき)むんでなく、余裕があって大局観のあるいいピッチングだったんだよ。
左の田中。低めストレートがボール。外スラでストライク、インコースのカットボール(打ってもファウルになる)で2ストライク。打ち気にはやるバッター心理を突いて簡単に追い込んだ。最初ストレートを見せたら、ゆるい変化球はまず手を出さない。で、甘めのストレート(に見えるカット)は絶対振ってくる→ファウルでカウントを稼ぐ。で、勝負球はズバッと外の147キロストレートだ。これはつり球だったかもしれないけど、球審が手を挙げてくれた。田中は見逃し三振。
右の山本。初球スライダーでストライク。これ、スライダーを待つのは至難の業だ。コースは甘いんだけど、「ストレートかっきーん!」のイメージで待つから見逃してしまう。ここで上沢、間を取る。真後ろ、センターを見る。僕は何見てんのかなぁと思った。いやぁ、満塁なんだけどユーモラスなんだ。で、2球目、スライダーを続けた。山本は意表を突かれ振らされる。ゆるーい球なんだけど着払いだ。完全に呑んでかかっている。3球目、外にズバッと来た。148キロストレート。山本三球三振。
このときなんだ。上沢が投げおろした後、反動で右足が一塁側へ跳ねて、身体がクルッと後ろを向いてしまった。上沢はそのまま右手の指でセンターを指さした。本当は指さしたかどうかわからないんだけど、僕にはそう見えた。指の先には西川遥輝だ。何なんだ、ベンチに向かってガッツポーズならわかるけど、西川に何のアクションをする?
よくわからないのだ。よくわからないけど、連想したのは金足農業時代の吉田輝星の「侍ポーズ」だ。あれは僕の思い過ごしかもしれないけど、何らかの「仲良し」だったんじゃないだろうか。後ろに向き指からビビビビビと上沢光線のようなものを放つなどして(あるいはそんな風に見えたけど、単に球速表示を確認して)、次に向き直ってベンチに下がるときはもう難しい顔をしていた。
僕は二者連続三振、カッケーと思いながら、その試合は上沢の後ろ、センターのほうをチラチラ見るようになっていた。野村佑希のホームランもセンターだったからね、こういうの「恵方」っていうのかな、センター方向は野球の明るい一面を示す方角だったんだ。
上沢直之たのんだぜ、楽天生命パークでもビビビビビと光線出してくれ。今年1年、僕らを明るい方角へ引っ張ってくれ。
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