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「君よ 暗黒時代と語るなかれ。」カープ ファンの私が考えた、野球における“暗黒“とはなにか

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/09
note

戦っている選手に先取り暗黒をぶつけたくないではないか

 負けるのってしんどい。負けるのって痛い。

 応援する側ですらそうなのだから暗黒の中戦っていた選手たちはいかほどか。首位打者嶋! 5位だけど。山内新人王に野村トリプルスリー! 5位だけど。怪我をしながら4番を打つ若い栗原、男前田にはどれほどあのCSに出て欲しかったか、希望の星エースマエケン、みんな吐くほど悔しい思いをしていたに違いない。

 戦い続ける力を才能をカープに注いでくれてありがとう。

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 応援できてよかったな、辛い時代を。辛いからこそ。暗黒を知っているから光は更にまぶしいと信じたい。

 と、言いつつも暗黒時代に戻りたいとは決して思わないあたり前田。3年優勝してはいないけど、Bクラスだけど、ほら、その、まだ時代というには早いでしょ。暗黒時代に入ったとか言うたらいけん。いまは暗黒時代じゃない! たかだかこんな期間で暗黒って言うな! 言霊ってあるだろ! 言ったらこの3年暗黒カウントされちゃうじゃん!

 戦っている選手に先取り暗黒をぶつけたくないではないか。時代は終わったからこそ時代と括れるのだ。いまが暗黒時代かどうかなんてわからない。次の優勝で「あの時代は」と区切れるのだ。暗黒時代は現在進行形ではない。完結したからこそのシンである。黄金時代も暗黒時代もいったんは終わる。終わったから次がある。選手は戦っているのだ。

 シン・エヴァンゲリオンのエンドロールに亡くなった知人の名があった。私に旧劇場版の原画仕事をふってくれた人だ。25年前のエヴァがシンにつながっているんだなあと再確認して涙が出た。知人の仕事は完結してなくなったのではない、大きな形になっただけだ。旧劇場版でいったん終わった(終わらせた)作品は、25年の時代を経てひとつになった。これでまた次の作品が生まれるのだ。終わったからこそ。実は旧劇場版エヴァを私は観ていない。仕事したのにね。すみません。不甲斐ない自分がこわくて。25年に向き合う日が来たんですかね。長いよね、25年。また遠い遠い目。私も終わらせます次のシーズンのために。

 次の戦いに向かう選手を応援したい。生みの苦しみあってこそ戦う意味がある。先取り暗黒はしない。今日を勝てと応援しよう。

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