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「投手ガッツポーズ」「打者のけぞる」…スポナビ野球速報でカープの試合を追うのが好きな理由

文春野球コラム ペナントレース2021

 今年もプロ野球が始まった。我らが広島東洋カープは故障で戦線離脱中の選手もおり、まだ本調子とは言えないかもしれないが、ポジティブな材料も多い。菊池涼介選手は開幕から打ちまくっているし、森下暢仁選手は2年目だというのに安定感がすごい。抑えのルーキー、栗林良吏選手は今年の新人王を争うであろう。中村奨成選手、羽月隆太郎選手、坂倉将吾選手など若手の野手もガンガン頭角をあらわしてきている。今年はどうやら阪神が手強いようだが、なんとか食らいついて3年ぶりのAクラス入りを、そしてあわよくば優勝してもらいたい。

 と、このようにプロ野球ファン風のことを口に出している時、いつも心に引っ掛かりがある。自分ごときが野球語ってすいません、という気持ちになる。なぜなら、私の持つ最近のプロ野球情報のほとんどは「スポナビ野球速報」で得たものばかりだからだ。

©文藝春秋

しかしこれは本当に“野球を観ている”と言える状態なのか

 プロ野球ファンなら誰もがスマホにインストールしているであろうスポナビ野球速報。おかげでどこにいても、ほとんどタイムラグなく試合状況を知ることができる。投手が投げ込んだコースや球種、球速までわかる。記録に残りやすいデータ以外にも「投手ガッツポーズ」「打者のけぞる」「止めたバットに当たる」といった現場感のある情報まで知らせてくれる。試合終了後は各選手の最新成績が更新される。打率や本塁打数といった基本的な成績だけでなくOPS、犠打数、盗塁数、得点圏打率などテレビや新聞をパッと見ただけでは把握しにくい部分まで知ることができる。最近は二軍の試合情報までカバーしてくれていて実にありがたい。

 球場に行けずとも、試合中継を観られずとも、スポナビをこまめにチェックしていれば最近のプロ野球情報は割と頭に入ってくる。しかしこれは本当に“野球を観ている”と言える状態なのか。

 私はボールの動きも選手の顔も実際に観ていない。見ているのは画面に表示された文字と数字の羅列だけだ。それなら別に野球じゃなくてもいいんじゃないか、と自分を疑いたくなることもある。だから飲みの席などで野球好きの人に話題を振られると、「まあ、そんなちゃんと観てるわけじゃないんスけどね……」とつい卑屈な態度を取りがちだ。あまり知ったような顔をするとどんどん話がコアな方向へ進み、スポナビで得た知識だけでは対応できなくなってくる。源田の守備を熱く語りはじめた相手に「なるほど」「確かに」と曖昧な相槌を打ちながら、早くこの話おわんねえかな、と考えてしまうような状態に陥ってしまう。

 スポナビを見ているだけでは、細かい守備のことはよくわからない。たまに「逆シングル」「グラブ弾く」「スライディングキャッチ」といった守備に関する詳細が追記されることもあるが、基本的には打撃や投球の情報がメインだ。そもそも私は野球をちゃんとやったことがないせいか、守備の技術というものがよくわかっていない。中学時代にパワプロをやり込んだだけで何となく守備をわかった気になっていた頃もあったが、やはり実際の野球をある程度観ないと守備を観る眼は育っていかないのだろう。YouTubeでファインプレー集などを観ても、恥ずかしながらいまだに凄さがあまり把握できない。音楽で言うなら、ベースとギターの音を聞き分けられていないような状況だろうか。守備をわかっていないということは、野球の半分をわかっていないということかもしれない。