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IOC公認の「パワプロ」大会に出場 約7000人の予選→8人のファイナリストに! 結果は?

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/22
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 明日、ついに東京2020オリンピックが開幕します。

 前代未聞のコロナ禍に翻弄され賛否両論のなかでの開催とは言え、それでもスポーツには人を感動させる力があると思います。難しい状況のなかで準備してきたアスリートが己の力を発揮し、このような時代を生きる多くの人の勇気や希望に繋がりますように。

 スポーツの力と言えば、海の向こうから連日ホームラン速報を届けてくれる、メジャーリーガー大谷翔平選手に勇気をもらっている人も多いのではないでしょうか。

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 一昔前は二つのことをやっていると、ともすれば「二足のわらじ」と揶揄され、中途半端という少し悪い印象で表現されることもありました。しかし大谷選手の活躍もあり、複数のことにチャレンジしても「二刀流」と好意的に表現されるようになったと思います。大谷選手は、あらゆる人がマルチな才能を発揮する下地すら作ってくれたのではないでしょうか。

 実はこの夏、僕も二刀流にチャレンジし、そしてそのことでなんとオリンピックに出場したのです。

歌手とeスポーツ選手の二刀流への挑戦

 改めて自己紹介をすると、僕の本業はシンガー・ソングライター。福岡ソフトバンクホークス和田毅投手の登場曲「21」などを作り歌っています。「21」では和田投手からの感謝とファンのエールを繋いだように、なにかを“繋ぐ”架け橋としての役目を自負しています。(過去記事参照

筆者 ©冨永裕輔

 僕が挑戦した二刀流は、eスポーツでした。eスポーツとはエレクトロニック・スポーツの略で、スポーツや格闘、レーシングなどのゲームをプレイして競う競技です。

 海外では億の賞金を稼ぐスター選手も誕生するなど盛り上がりを見せているeスポーツですが、日本のeスポーツ市場はどちらかと言えばまだ発展途上と言えます。しかしここに来て、コロナ禍によるオンラインの波も追い風となり、多くの人がゲーム、eスポーツに触れる機会が増えています。様々な業界や企業が売り上げを落とすなか、巣ごもり需要と重なりNintendo Switchや「あつまれ どうぶつの森」の世界的ヒットで、大幅に業績を伸ばしている任天堂もその一例でしょう。

 コロナ禍は、歌手の僕にとってとてつもない逆風です。約15年間の歌手活動のなかで、毎週のように行ってきたライブが初めて出来ない状況に陥りました。レギュラーラジオや配信による音楽活動を継続しながらも、大きな目標に向かい努力し、夢を叶えてファンの皆さんと喜び合えるライブに代わる機会は見つけられないでいました。

 そんなときに飛び込んできたのが、今年初めてeスポーツがIOC公式競技となり、オリンピックバーチャルシリーズが世界初開催されるというニュース。そのなかの野球競技で使用されるソフトが「パワプロ」でした。

 僕は子どもの頃から実際に野球をするのも、そして野球ゲームをするのも大好きで、特に好きな野球ゲームが「パワプロ」でした。

「パワプロ」では自分の分身を作って実在のプロ野球チームでプレイすることができます。大学生の頃も、歌手になってからの厳しい下積み時代も、気晴らしといえば「パワプロ」の世界で“冨永裕輔選手”をプレイすること。

 憧れの和田毅投手とお立ち台に並んでのヒーローインタビューを夢見て、「パワプロ」の中でその夢を叶えていました。今思えば、その夢は「21」のMVで実現しており、効果的なイメージトレーニングだったとも言えるかもしれません。

 その「パワプロ」が、僕をオリンピックの舞台に導いてくれました。

©冨永裕輔

バーチャルとリアルが繋がったからこそ感じたこと

 世界初の、歌手とeスポーツ選手の二刀流でオリンピックを目指すということが、素直に楽しそうだと胸が踊りました。

 そもそも歌手の道を選んだのも歌が大好きだったからですし、胸がときめくことにチャレンジして生きるのが僕の生き方。この機会にチャレンジしなければ絶対に後悔すると思い、予選に参加することを決めました。

 オリンピックバーチャルシリーズ開催を知った後日、試合で戦うPS4部門と、ホームラン大会で競うNintendo Switch部門の詳細が発表されました。僕はホームランの飛距離で「パワプロ」愛を表現したいと、Nintendo Switch部門にオンライン参加しました。

 しかし、オリンピックへの道はやはり甘くはありません。日本、韓国、チャイニーズタイペイから参加の約7,000人の中から決勝大会に出場できるファイナリストは8人だけです。

 予選は5月24日(月)~5月30日(日)の1週間戦われ、猛者たちと競い合い打ち続けたホームランの数は最終的には実に約30,000発に及びました。総飛距離は約400万メートル。1日の平均プレイ時間は17時間を超え、細かい操作技術はもちろんのこと、情熱や体力も試されるまさにeスポーツがスポーツたる所以を体感しました。

 そして、なんとかファイナリストに残ることができたのです。

©冨永裕輔
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