デスパイネも井上も、打ち砕いた球種はスプリットだった
角中が四球でつないで一、二塁にすると、井上晴哉である。当時はまだプロ3年目で通算本塁打はルーキーイヤーの2本だけ。「まあ1点取ったから、アジャ、気楽な気持ちで……」と思っていたら、またも高めに抜けたスプリットを叩いて、レフト線を破る2点タイムリーツーベースである。
と書いたところで、デスパイネも井上も、打ち砕いた球種はスプリットだった。今やメジャーで「被打率が0割台!」とか「メジャーで最も打ちづらい変化球!」とか海外メディアが伝えたと各メディアが喧伝するが、5年前のロッテ、それ打って勝ちましたからね! と英語で伝えたい気分である。その後7回まで無失点で抑えられたことは触れないようにしつつ……。
ちなみにこの試合、2015年の最多勝投手同士の対決ということで、涌井と大谷の投げ合いをイメージしたタオルなどなど、限定コラボグッズが続々と発売されていた。球団の枠を超えてこのような商品が生まれたことに、当時からの大谷人気を感じる。そんな大谷を打ち崩したというのがたまらなく快感だった。
この年は最終的に日本ハムにシーズン1位を譲り、クライマックスシリーズでもロッテは下克上する挑戦権を得られず、最終的には大谷が日本シリーズMVPに輝いた。ロッテ視点で見ればちょっと悔しい1年だったが、投打に全知全能感があった大谷相手に、シーズン真っ先に土をつけたのがロッテだった――そう思うと、世間的には“ちょっと空気を読めない”ロッテらしさ本領発揮で、ファンとしては今思い出しても密かな快感である。
でもまあ……当時は恐るべきライバルだったけど、今やメジャー相手に本塁打と奪三振で大いに沸かせてくれる大谷のおかげで、ロッテの魅力を再発見できたのかも。ロッテ愛が深まる5年前の一戦を思い出しつつ、五輪の合間に大谷のビッグフライと100マイルを楽しもうかな……と、いち野球ファンとして応援したい。
そして五輪に沸いた世間を再びアッと言わせる戦いを秋に見せるために。井口監督や選手たちにはぜひエキシビションマッチを有効活用してもらいたいなあ……と願う次第です。
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