「高卒から16年やってる大和の努力はすごい」
私にプロ野球のいろはを教えてくれたメンバーも、俊介の引退をもって残る現役選手はDeNAに移籍した大和のみとなった。今成はタイガースアカデミーでコーチ業を、二神は矢野監督の隣につき広報を、鶴は球団の事業本部/振興部でそれぞれが今も阪神に関わりながら新しいポジションで奮闘している。先にグラウンドを離れた彼らにとっても大和の姿は特別に嬉しいものだ。
DeNAに移籍した大和が正遊撃手として活躍している姿をみて、二神がこう漏らしたことがある。
「プロで長くできる選手は一握りなのに高卒から16年やってる大和の努力はすごいと思う! 横浜での試合後、帰りのバスに向かうときに何度もバットを持って室内に練習にいく姿もみかけたし。当たり前なのかもしれないけど尊敬するよね」
二神自身は2009年のドラフト会議で1位指名を受けた。しかし、初めてのシーズンを迎える前から故障に悩まされ、プロ生活は7年で幕を閉じた。我々も今年で34歳。私なんて、近頃は駅の階段をのぼるだけで息が上がる始末だ。見渡せば球界に選手として残る同い年の選手も数えられるほどになってきた。階段の昇降で筋肉痛になる私ですら、同い年の選手が輝く姿は喜ばしい。「同級生たちもベテランの域でそれぞれの現役の終わり方はあると思うけど、同級生の活躍はずっとみていたいし納得するまでやり切ってほしい」。同じユニホームに袖を通した者たちにはさらに格別な想いがある。
128人が新たにプロ野球選手のスタートラインにたった。プロの世界で活躍することはその球団のファンはもちろん、幅広い同世代の人たちを喜ばすことが出来る。大和は高校生ドラフト4巡目。現在セ・リーグトップの盗塁数を誇る中野拓夢はドラフト6位指名だ。松坂大輔とまではいかなくても、誰にだってその世代を代表する可能性はある。森木大智、鈴木勇斗(創価大)、桐敷拓馬(新潟医療福祉大)、前川右京(智弁学園)、岡留英貴(亜細亜大)、豊田寛(日立製作所)、中川勇斗(京都国際)、伊藤稜(中京大)。今年は全8人の選手が阪神に指名された。数年後、数十年後、街の居酒屋さんで「俺、〇〇世代やねん!」と誇らしげに酔っぱらう人たちの口から8人の誰かの名前が出てきてほしい。そんなことを考えた2021年10月11日の深夜であった。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ペナントレース2021」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/48963 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。