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17年間のプロ生活で、いちばんいいプレーが出た瞬間

 06年の日本シリーズは、ナゴヤドームの2試合を1勝1敗で終えて、札幌ドームに舞台を移しました。僕は、この第3戦が大事だと思ったんです。北海道で初めて行われる日本シリーズ、その最初の試合です。それがどっちに転ぶかで日本シリーズの流れが変わる。できることなら、北海道の熱気のなかで一気に決めてしまいたい。

 先発は、武田勝さんと朝倉健太です。初回は1点取られました。で、先手を取られてシュンとなった後の、1回裏の攻撃です。僕は、この雰囲気を変えるなら初球しかないと思ったんです。先頭で僕が出れば一気に変わると。朝倉の初球シュート、ライト前に打って出塁したら、球場がうわああぁっと盛り上がって、いける!という雰囲気になった。

 次の田中賢介がバントしました。これがバントミスになったんです。谷繁さんが拾って迷いなくセカンドへ投げた。そこで、僕はセーフになりました。これが走塁のベストプレー。日本シリーズの映像は使えないことが多いので、見てもらう機会がなかなかないのですが、僕が17年間のプロ生活で、いちばんいいプレーは何だったか?と聞かれたら、あの走塁です。賢介のミスをカバーして、試合の流れ、日本シリーズの流れを作った。犠打とフィルダースチョイスで無死1、2塁。その後、小笠原道大さんが左中間に2点タイムリーを放って逆転、更に稲葉篤紀さんの犠牲フライで、1回裏3点です。

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 そのまま札幌で3連勝して、日本一を決めました。夢がかなった、最高の時間でした。

 僕や賢介の世代は、鎌ケ谷で白井一幸2軍監督に鍛えられたんです。白井さんは常に「全力プレー」を要求しました。「それがお前の全力か?」が口グセで。守備練習のたった1本のノックでも、イースタン・リーグの試合でも「全力でプレーしろ。今、ここが日本シリーズ第7戦の勝敗を分ける場面だと思え。それがお前の全力か? 全部出し切ったか?」とイメージトレーニングさせるんです。どの場面も、すべて日本シリーズを想定しました。

 だから白井さんの言ってた日本シリーズの舞台に、本当に自分が立って、全力でプレーできたのはしみじみ嬉しかったです。僕たち鎌ケ谷で毎日汗だくになって、想像の日本シリーズを戦ってたんです。

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