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ロッテ・佐々木朗希の“連続”を阻止したファイターズのパーフェクトな勝利

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/04/23
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無駄な出塁、無駄な進塁を一つも許さなかった守備陣

 空前の大記録に立ちはだかるのが近藤健介でも他の打者でもなく投手の上沢だと気づいた時にはもう手遅れ。テレビ東京が「佐々木朗希、2試合連続完全試合まであと1イニング!」と叫んで生中継を終えた頃、上沢の後を受けた堀瑞輝も8回を0点に抑えた。井口資仁監督は「8回に点が入っても朗希はあそこで交代だった」というから、7回までの上沢の好投が完全試合を阻止したと言っていいだろう。

 朗希が去ったマウンドにファイターズの苦手・益田直也が上がった。継投でのパーフェクトはまだ続いている。中日との日本シリーズ、山井と岩瀬が思い出されたところで、宇佐見が空振り三振した球を松川が捕球できずに振り逃げ。記録は益田のワイルドピッチ。これまた意外な形で継投による完全試合も潰えた。

 9回裏のマウンドはルーキー北山亘基。杉浦稔大に似た素晴らしいストレートとフォークを持っている。さらにピンチに強い。死球とボークと敬遠と送りバントで一死二、三塁。サヨナラなら継投によるノーヒットノーラン達成という場面を三振、四球、三振でしのぐ。

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 しかし、今年は12回まで延長がある。ノーヒットノーランは続いている。固唾をのんで試合を見守る観客……と思いきや、グレーのパーカーがぞろぞろと出口に向かった。多くの人がバッグや荷物を持っている。帰り始めたのだ。彼らはその後に飛び出した、あの美しい万波中正のホームランを見ていない。

 7回に2番・細川の代打で出てきた万波は3度空振りしての3球三振だった。朗希のフォークにかすりもしなかったバットが10回表の2打席目、西野のフォークをとらえてバックスクリーンの右に放り込んだ。これでノーヒットノーランも消滅。次の近藤の打席で雨が落ちてくるとさらに空席が増えていく。

 10回裏、宮西尚生が締めてファイターズは勝った。「9回まで無安打ながらも延長戦での勝利」は史上7度目。しかも1安打で勝ったのは、日本ハムの前身の前身の前身、東急フライヤーズ以来73年ぶり2度目だという。

延長10回に刻まれた1安打と1点(9回無安打~延長で1安打勝利は73年ぶり) ©近澤浩和

 そんな記録よりも大きかったのは、ファイターズが守り勝ったということだ。

 この試合の守備で、無駄な出塁、無駄な進塁は一つも許さなかった。9回の北山は不運なボークで進塁させたものの、牽制とクイックで和田康士朗を走らせなかった。10回、藤原の送りバントを猛ダッシュでつかんだ野村がセカンドへ送球してアウト。続く中村奨吾の左中間に飛んだ打球は一瞬「やられた」当たりだったがレフト淺間がキャッチ。どうやら予めセンター寄りにシフトしていたようだ。清宮に石井、去年はここぞの場面でエラーが目立った内野陣もこの日はノーエラー。

 世紀の一戦は、我らファイターズのパーフェクトな勝利だった。

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