「今、ロッテが強い!!」

 交流戦も終盤にさしかかった6月某日。こんな言葉を見かけてドキッとした。

 千葉ロッテマリーンズは明らかに苦戦していたからだ。2年連続2位から「頂点を掴む」を胸に戦っているものの、投手陣と打線がかみ合わない。荻野選手や角中選手、藤岡選手の故障もあった。この2年間の主軸選手の不調や不在は、チームもファンも、そして実況の私も想定外だった。

ADVERTISEMENT

 そんなタイミングで見かけた冒頭の言葉が刻まれていたのはYouTubeのライブ配信のサムネイル。その内容は野球ゲームの定番“パワプロ ”(eBASEBALLパワフルプロ野球2022、以下パワプロ)のゲーム実況。パワプロで国内トップ10に入る腕前を持つ及川くんの「及川 BASEBALLチャンネル」だった。

なぜロッテが強いのか?

 パワプロは私にとって馴染みが深い。1994年発売の第1作(当時はスーパーファミコン)からプレイし、2018年からゲーム内で実況アナウンサーのひとりを担当している。2018年から行われていたパワプロのeスポーツ大会・eBASEBALLでも実況を務めさせていただいた。及川くんはそのeBASEBALLの常連プレイヤーだった。

eBASEBALLパワフルプロ野球2022 NINTENDO SWITCH パッケージ
eBASEBALLパワフルプロ野球2022 PS4 パッケージ

 “なぜロッテが強いのか?”

 そんな疑問と、ゲーム内の潜在能力に期待を抱き、パワプロにおけるロッテの使用感をプレイヤーの及川くんに尋ねてみた。

 すると「守備と走塁に安定感があります。調子(の良し悪し)で選手起用の選択肢が多いことも理由かもしれません」という返事。

 実際のロッテもダントツの盗塁数に加え、マリンの強風に負けない守備の安定感。打線は限られたメンバーの中で好不調や相性を考慮しながら様々なオーダーでここまで乗り切ってきたことが見て取れる。

 ただ、打線は「特にマーティンやレアードの調子が悪いと、いかんせん火力不足感は否めなかったです。守備走塁は他の選手でバックアップできるんですが……」と付け加えてくれた。

 パワプロの対戦では試合毎にランダムで変わる選手の調子によって能力が上下するのだが、どうやらゲームでもマーティンやレアードの調子の良し悪しがチームの命運を握っているようだ。

 ただ、それで分析を結論づけるのはあまりにも容易すぎる。

 2人以外にロッテ躍進のキーマンは誰かいないのか? 私はそんな期待の選手をパワプロ で「強いロッテ」から逆に導けないか?と考えた。

「一塁手の中でも名手クラス」

 パワプロには、実際の成績などから導き出されたミート・パワーなどの値のほか、状況によって発動する“特殊能力”が選手の個性を際立たせる。それらを含めたパワプロの能力を基に、前述の及川くんと同じパワプロのトッププレイヤーである “めし原”くんにも意見を伺うと、3人の選手が浮かび上がってきたのだ。

(1)井上晴哉選手 

 
 

 ご存じ、幕張の大砲。右手首を手術し、既に6月のファームでは復帰。一軍復帰を待つファンは多い。実はパワプロのオンライン対戦で、井上選手を中軸で起用するケースを多く目にする。

 弾道4・パワーCというロッテに不足しがちな“火力”を補い、逆方向への打球速度が落ちにくい「広角打法」という特殊能力が、その火力をさらに増す。パワプロにおいてロッテでは井上選手だけが持っている「広角打法」は、右方向へのホームランも多い井上選手を忠実に表現しているといえる。

 

 それでも、めし原くんはプレイヤーが井上選手を起用する理由について打つ能力以外にも「守備力で選ぶ人が多いと思います」と分析する。パワプロにおける守備力は「守備時における動きの素早さ」を表す値だが、井上選手はC(同じ一塁手でレアード選手はE、山口選手はF)。この値は及川くんも「一塁手の中でも名手クラス」という。思い返せば2020年のゴールデングラブ賞は、わずか2票差の3位だった。その守備力はパワプロでバッチリ再現されている。

 マリンで復活の“ごっちゃしポーズ”が見られる日は近いだろう。そして、チームを救う守備の動きにも注目してみたい。