「巨人のアダム・ウォーカー選手のスローイングをテーマに、コラムを書いていただけないでしょうか?」
『文春野球』の巨人監督を務める菊地選手から、そんなリクエストがLINEにて届いた。
LINEのやり取りを終えるや、ウォーカーの投げる姿が脳内を駆け巡る。
私が初めてウォーカーのキャッチボールを生目撃したのは4月中旬に甲子園球場でおこなわれた阪神対巨人戦だった。
大学時代から指摘されていた送球難
イニング間のキャッチボールをレフト外野席から見ていた。レフトを守るウォーカーはレフトファウルゾーン付近に位置する控え野手とキャッチボールをしていた。その距離、目視で約30メートル。しかし、ウォーカーが投げる山なりの軌道の球は、相手までノーバウンドで届くのがやっと。弱々しく、手前でバウンドしてしまうことも珍しくなかった。右上方への抜け球になり、投球が大きく逸れるシーンもあった。
来日当初からウォーカーのキャッチボールはメディアをざわつかせていた。
「どこかケガをしているのではないか」
「もしかしてイップスなのか」
そんな疑惑も生じたが、「仮にそうであればさすがに試合で使わないだろう。単に投げることが苦手なのだろう」と片付けられる形でペナントレース開幕を迎えていた。
ウォーカーは昔からスローイングに難があったのだろうか。そう思い、インターネット検索してみたところ、大学時代のドラフト候補プレーヤーズプロフィールを見つけた。掲載年は2012年。守備面を評する項目では次のように書かれていた。
<彼はいい肩を持ち合わせていない。大柄な体格のわりに脚力があるので、プロの世界でレフトをこなせる可能性はあるが、本職とすべきポジションは一塁手なのかもしれない。しかしハンドリングの柔らかさには欠ける。一塁手を務めるならもっと練習しなければならない>
(大学の時点でそういう評価だったのか……。塁間程度のキャッチボールも怪しいし、ファーストを守るのも厳しかったということなのかな……)
巨人入団後、中継に入るショートはウォーカーのスローイングを考慮し、通常よりも距離を詰めていた。それでも、返球がカットマンまでノーバウンドで届かないシーンが目立つ。地面に叩きつけてしまい、ゴロのような返球になってしまうこともあった。
張本、松本、吉村……過去の例をしのぐウォーカー
巨人ファンになって47年。その間、普通なら防げる進塁を相手チームに許してしまうレフトがいないわけではなかった。
晩年を迎えていた巨人時代の張本勲の弱肩は子ども心に衝撃だった。もともと強くない肩が年齢と共に衰え、センターからレフトに回った晩年の松本匡史、左肩を痛めた影響でライトからレフトに回った87~88年の吉村禎章もフリーパスに近い状態だった。しかしウォーカーのスローイングは自分が知る限り、過去ワーストレベルだった。
だが、ウォーカーのスローイングにもどかしさを覚えることはあっても、怒りや失望、諦め、嘆きといった感情が湧くことは不思議となかった。素晴らしい身体能力とパワーを誇りながら、持っている力の一部しかボールに伝えられていない印象が常にあった。妻には「スローイングがひどいと言うわりに、ウォーカーに対してはやけに温かい目で見てるよね」と言われた。
「肩が弱いというよりは、力を指先に伝える術をまだ体で理解できていない野球初心者のような印象を受けるんだよなぁ……。ウォーカー本人も『米独立リーグではコーチ陣も揃っておらず、外野守備についてしっかりと教わったことがなかった』って言ってるらしい」
「そうなの!? 習ってないことはできなくても仕方ないし、責める気にもなれないよね」
「亀井善行外野守備走塁コーチが日々、マンツーマンでスローイングを指導してるんだけど、素直に根気よくひたむきに課題克服と向き合ってるらしい。そういう話を聞くと現状のスローイングを嘆くんじゃなく、ひたすら応援したくなるんだよな」
「きっと教わる喜びに溢れてるんだろうね……。野球素人の私でもここからうまくなる予感しかしないわ」