「悔しいことが多いです。嬉しいことは次の日には忘れています。とにかく悔しさを晴らしたい、やり返したいと思っています」
土田龍空はここまでをそう振り返った。近江高校からドラフト3位で入団した2年目内野手は今、スタメンで起用され続けている。
「チャンスを与えてもらっているのに、チームに迷惑をかけてばかりです。得点圏で僕が打っていれば勝てた試合がいくつもありました」
凡退後、感情が溢れる時がある。
「あれでも抑えている方なんです。バットを投げていいなら、投げたいですし、折っていいなら、その場でへし折りたいくらい悔しいです」
「荒木コーチとの反省会が影響している」
この男の血は熱い。OBの藤井淳志氏は「やんちゃでプロ向きの性格」と話し、スカウト陣は「天才肌で野生児」と評する。土田は爆発寸前の悔しさを次の日の練習にぶつけている。ただ、プロは厳しい。打撃の結果はすぐに出ない。さらに自信のあった守備でもミスが出る。土田に悔しかった守備を聞いた。
「まずは甲子園でライデル(マルティネス)が投げている時に近本(光司)さんに還られたプレーですね」
7月16日、甲子園の阪神戦。1点リードの9回裏、1死三塁。糸原健斗の放ったゴロは前進守備のショートへ飛んだ。土田は捕球し、バックホーム。しかし、三塁ランナーの近本は間一髪でホームインした。
「送球が一塁側に逸れたのが反省です。あの場面は逸れてもランナーが来る方に投げないと。あと捕球体勢も悪かったので、一発(捕ってすぐ一連の動作)で投げられませんでした。もっと下半身が強くて粘れれば、一発で投げられたと思います。結局、ハーフバウンドで捕ったんですが、理想はショートバウンド。一歩目の反応も課題です」
8月3日、神宮のヤクルト戦。3回裏、無死一塁で村上宗隆は二遊間へゴロを打った。土田は追い付いたが、ボールが手に付かず、二塁に投げられない。バックトスを試みたが、送球は乱れ、失策となった。
「最初は普通のトスをしようと思ったんです。でも、体が(セカンド方向に)流れて、うまく握れず、バックトスに切り替えたんですが、それでも握れませんでした。これも原因は下半身。もっと粘れれば、体が流れず、ちゃんと送球できたと思います」
熱い土田だが、プレーの説明は明確で、冷静で、理路整然としていた。なぜか。これには毎試合後に行われる荒木雅博一軍内野守備走塁コーチとの反省会が影響している。1つ1つの動きをゴールデン・グラブ賞6度の名手が丁寧に解説しているのだ。
「本当に勉強になっています。毎日、荒木さんとは基礎練習をしていますが、それが下半身強化にもなるので、甲子園のミスからは本数を増やしてもらっています」