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野球を辞めて生活していけるのか…僕が経験した「戦力外通告」と“その後”

文春野球コラム クライマックスシリーズ2022

2022/10/10
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野球を辞めて、自分は生活していけるのか?

 子どもの頃に始めた野球が、運よく仕事になった。それが僕の人生だった。

 いざ野球をやめるかもしれないと考えたときに、今までにない不安に襲われた。大げさかもしれないが、荒れた大海原に何も持たずに投げ出されるような恐怖感に包まれた。

 今まで野球しかしてこなかった自分が、本当にこの先、ほかの仕事で生活していけるのだろうか?

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 こう思う選手は、多いのではないだろうか。

「野球を辞めたら何の仕事する?」

 選手同士でプライベートで食事をする際、よくそんな会話になる。プロ野球選手には、いつまでも現役でいたいという気持ちと、いつか辞めた時の不安を持っている人が多い。

 確かに引退した翌年から違う仕事になった時は、いろんな壁にぶつかった。

 でも思い返せば、野球をしている時から同じだった。この壁を乗り越えたら、今より成長した自分になれる。

 野球の仕事も、それ以外の仕事もベースは同じだ。小さい頃から長くやってきた野球に置き換えて考えると、わかりやすい。

 誰でも、最初からなんでもできる人はいない! 野球でも、今はできないことができるようになるために、毎日練習する過程は一緒だ。

 現役生活をやめて次の仕事を始めた人は、当然、壁にぶつかるだろう。

「今、自分がぶつかっている壁は、野球選手だった頃のあのときの経験に似ている。当時は、ああやって乗り越えたな。よし、今回もこういうことに気をつけてやっていこう!」

 野球で培った経験は必ず、違う仕事でも活用できるはずだ。

引退後にわかった、プロ野球選手の価値

 子供のころにプロ野球選手に憧れて、夢中になってプレーしてきた結果、夢の舞台にたどり着くことができた。確かにあの舞台で味わった興奮や緊張感は刺激的で、他の仕事ではなかなか経験できない。

 でも、僕たちは野球をするためだけに、この世に生まれてきたわけではない。野球選手をやめた後の人生の方が、はるかに長い。

 僕は今、ライオンズの本拠地・ベルーナドームでお店をやらせていただいている。球場にいることが多く、「自分もかつて、この球場でプレーしていたんだよな」と不思議に思うときがある。

 今、選手たちがプレーしている姿を見ると、「プロ野球選手ってやっぱりカッコいいなぁ!」と感じ、自分もプロ野球選手だったことが誇らしくなる。

 自分もそうだったように、子どもたちに「将来はプロ野球選手になりたい!」と思わせてくれる、夢のある職業だ。

 スタンドから見えているのは、カクテル光線に照らされて、光り輝いてプレーしている選手たちの姿だろう。

 でもその影では、汗水垂らして努力しても結果を出せずに、苦しい時期もたくさんある。

 光と影。

 プロ野球は甘くない。実力勝負の厳しい世界だ。

 今季限りでプロ野球界から退かれた方々、本当にお疲れ様でした。

 野球界から退いたあとの第2の人生でも、プロ野球選手だった勲章は胸の内ポケットにしまい、お守りにして、現役のときのようなチャレンジ精神で、たくさんの人に夢と希望を与えられる人間になり、野球人生で培ってきたもので社会に貢献し、子どもたちにも「野球選手は野球をやめた後もカッコいい!」と思ってもらえるように――。

 そんな存在になれるように、ともに歩んでいきましょう!

◆ ◆ ◆

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