先日、この「文春野球コラム」に寄稿いたしました「ホークスさまに届け! ライオンズが味わった2010年の“悪夢”という名の宝物」なる記事。ひいき球団の勝利を望むあまり、今季の流行り言葉を交えた呪詛まみれの記事を綴ってしまいましたが、まさに「人を呪わば穴ふたつ」といった調子で、我が埼玉西武ライオンズはファーストステージ敗退が早々に確定。「『笑う山川』が襲い掛かる」などと予見し、確かに山川さんが笑っていたのはいいものの、試合中に一塁の守備でニコニコ談笑していたり、敗退後は「ファイナルステージも頑張れよ!」みたいな笑顔でスッキリしていたりで、どちらかと言えばライオンズ側にとって胸を深くえぐられるような笑顔でした……。

 しかし、そうしたショックからはもうすっかり立ち直りました。ファイナルステージで演じられる「これぞプロ野球」という熱戦を見ると、よしんばここに進出したところで勝ち抜くことは難しかっただろうと素直に納得できました。我が方を粉砕したホークスをもねじ伏せる「山本由伸」という異次元の存在。1勝アドバンテージ+山本アドバンテージがある相手を倒せる気はしません。この記事を書いている時点ではまだ結果は出ていませんが、バファローズ・ホークス・スワローズの三つ巴の頂上決戦から一体どこが日本一に至るのか、「真のプロ野球開幕」といった気持ちで見守りたいと思います。

 それに我が方には新たな「お楽しみ」があるのです。ほぼ毎日21時前後から始まる「たいらげーむ」なるゲーム実況配信。なんと、昼は埼玉西武ライオンズのプロ野球選手として働く平良海馬さんがYouTuberという新たな領域に挑み、野球ファンはもとよりゲームファン・動画クリエイターファンをも引き寄せながら、日夜多くの人々を楽しませてくれているのです。これを見ていると夜のスポーツニュースを見る余力もなくなり、つらい移籍のニュースも目にしなくて済むという寸法。もういっそ、このまま春までずっと配信していてほしいくらいです!

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「たいらげーむTairaGame/【パワプロ】質問ある?(現役プロ野球選手です)たいらかいま」からのスクリーンショット

「黙れ」の決めゼリフにハマる人が続出! ヤフコメにも言ってやってください!

 埼玉西武ライオンズが優勝争いをまだつづけていた8月末、「たいらげーむ」はひっそりと誕生していた模様。その頃に投稿された、現在残る動画でもっとも古いものは、トークなどもなくただひたすら『APEX』という人気バトロワゲームをプレイする様子が配信されていました。その後、9月9日には平良さん自身のツイッターアカウントで「たいら個人のYouTube始めました~」と告知。視聴者からの質問に答えたりする予定であることも明かし、野球ファンを中心にチャンネル登録者は拡大します。

平良海馬 ©時事通信社

 9月14日のチャンネル登録者4000人到達を記念した配信では『マインクラフト』でベルーナドーム建設に挑み、球場建て替えという叶わぬ夢を見るライオンズファンをむせび泣かせます。9月18日にはチャンネル登録者1万人大感謝配信、10月6日にはチャンネル登録者5万人ありがとう配信を実施し、順調にチャンネルを成長させていく平良さん。同僚たちからの認知も進んでいるようで、マイクをミュートにしたまましゃべりつづけるという凡ミスをした際にはライオンズ・與座海人さんが「ミュート解除してないよ」と電話で教えてくれたり、10月7日の配信ではライオンズ・今井達也さんがゲスト出演したりしたこともありました。

 しかも、単に「野球選手が配信している」という知名度ありきのものではなく、ゲームの腕前も見栄えがするレベルであり、声がハッキリと聞き取りやすいのはゲーム実況者としての天性の素質も感じさせます。本人は配信慣れしていないと謙遜しますが、視聴者のコメントを拾って簡潔でキレのある返事をしながらプレイすることは簡単なことではありませんし、毎度マイクがミュートの状態で始まってしまう設定ミスや配信中にもよおしてくるお手洗いの近さを「恒例ネタ」として吸収していくあたりも見事なものです。

 特に感心させられるのは、自身も「賛否両論YouTube」と称するように「ゲームなどしてないで野球を頑張れ」系のイヤーなコメントをつけられたときの対応力。戯言を無視するスルー力はもちろんありつつ、ときおり嫌味にならないカラッとした口調で釘を刺すバランス感覚が絶妙です。そうしたイヤーなコメントに対する「黙れ」「黙れ~い」の返しは決めゼリフ化しており、クライマックスシリーズを目前に控えた配信では「早く寝ろよ」「黙れ」、「そんなゲームばかりやってたらホークスに負けるぞ」「黙れ」、「そんなゲームばっかやってたらヤクルトにボコサレルヨ」「黙れ」と必殺の「黙れ」を連打。コメント欄は大盛り上がりとなり、もはや平良さんに「黙れ」と言ってもらいたい雰囲気さえ生まれてくるほど。

 こうなるとアンチが暴れたところで「黙れ」と一喝してタイムアウト(※強制的に一定時間コメントできなくさせる処置)にすると、むしろ配信が盛り上がってしまう流れとなり、アンチも成すすべがありません。そろそろ球団の営業部が「黙れ」タオルとかを製作するのではないかと期待感も高まってきます。一般的野球ファンが「相手打者をねじ伏せる的な意味なんだろうな……?」と思っているなかで、本当に純粋に「黙れ」という意味だと知っている人はニヤニヤが止まらないことでしょう。六甲おろしの大合唱が始まったりしたときに掲げるのにもちょうどいい感じで、汎用性も高そうですよね。時代はヤンワリと「お静かに」ではなく、ズバッと「黙れ」なのです。