ホークスとのCSファーストステージは悔しすぎる敗退に終わりましたが……最後に山川穂高選手がライトに一発を放って一矢報いてくれたことでちょっと救われた部分もありました。
今48歳の僕は8歳の頃からライオンズを好きになり、40年来のファンです。埼玉で生まれ育ち、いつも一番気になるのはチームの成績です。
去年は物心ついてから初めて最下位を経験しました。今季開幕前にはすごく大きな戦力補強があったわけではなく、現有戦力がどれだけ巻き返せるかがカギで、「キーマンは山川穂高」と言いました。
過去5年ほど、ライオンズの浮沈には山川選手が大きく影響しています。2018年、2019年とホームラン王を獲ったときにはリーグ連覇し、思うように打てなかった2021年は最下位に沈みました。だからこそ今年もカギを握るのは山川穂高だ、と。
春季キャンプからすごく調子が良さそうで、バッティングフォームで話題になったのが「お尻を決める」。スポーツ新聞には「山川のお尻が決まれば、優勝も決まる」と書かれていました。
うまいことを言っているのか、どうなんだろうか……。そもそも「お尻が決まる」こと自体よくわかりません。一瞬、知ったかぶりをしようかなと思ったけど、それもできないくらいわからないなと(笑)。山川選手は自分の言葉で伝えられる人なので、直接聞きに行きました。
「今までは打ちたくて、打ちたくて、体がピッチャー方向に行きすぎちゃっていたんです。そうすると頭が動くから、自分のポイントでバッティングができない。体が前にずれないで、どしっと構えていいポイントで打つためには、お尻が決まれば体が前に出づらくなる。それが『お尻を決める』ということです」
シーズン開幕直後から見事にお尻が決まり、3・4月の15試合で52打数19安打、打率.365、ホームラン8本、19打点、四死球6。お見事すぎる成績です。
僕はテレビ埼玉で毎週月曜夜10時から放送している「ライオンズチャンネル」という応援番組でMCをやらせてもらっていて、「ファンが選ぶ月間MVP‼」という企画で選ばれた記念にインタビューさせてもらいました。
でも山川選手は「ケガしたのでダメです」という答えで、笑顔が一切なかったんです。確かに右太もものケガで一度登録抹消になりましたけど、それでもこの成績です。チームへの貢献度は月間MVPに投票したファンの人たちがよく感じていたでしょう。
それでも、「僕が抜けている間にずっとチームが負けていたし、基本的には抜けたらダメです」と納得いかない様子でした。実際、山川選手が欠場した14試合は3勝10敗1分けで、復帰してからの10試合は6勝4敗。再登録された後は山川選手の活躍もあり、チームは勝ち越しました。
「4月には森(友哉)も抜けましたけど、僕と森とゲン(源田壮亮)とトノ(外崎修汰)は絶対今のチームで休んじゃダメな選手です。それが基本です」
以前なら自分の打撃を大事にして、チームに関するお話を聞いたことがあまりありませんでした。それが森選手や外崎選手、源田選手の名前も出てきて、「チームのこともこれだけ考えているんだ」と感じました。山川選手がそういう話をしてくれて、すごくうれしかったですね。
「野球の深い話をしませんか?」
インタビューで聞きたかったのが、「全打席ホームラン狙い」の真相です。ホームランを狙うのは全打席なのか、あるいは全球なのか。「これは全球です」という答えでした。
ぜ、全球なんですか!? ちょっと驚いてしまいました。だって全打席なら、仕留める1球に集中すればいいわけです。
でも全球となったら、例えば1打席に平均5球あるとして、4打席で20球の全部に集中してホームランを狙いにいく。いくらホームランバッターとはいえ、すごいことだなと改めて思いました。
そんな話を聞いていると、山川選手から切り出してきました。
「堀口さん、月間MVPの話を1回置いておいて、ちょっと野球の深い話をしませんか」
なんだか鬱憤が溜まっている様子で、いきなり始まりました。山川穂高塾長による打撃の講義! 「『全打席ホームラン狙い』と言ったら、皆さんめちゃくちゃ誤解しています。これだけは言いたいです」とのことです。
その日のインタビューは日曜のデイゲームの後、さらにバッティング練習が終わった後に組んでもらいました。6時半から7時くらいの間で、クールダウンで喋りたいような感じだった山川選手はヒートアップしていきます。
「やっぱり、いいポイントで打つとホームランは出やすいです。いいポイントで打つために、ホームランを狙うんです。例えば去年みたいにポイントがずれていると大振りに見えてしまうけど、決して大振りしているわけではなく、『ポイントがずれている』という表現の方が正しいです。記者の人たちが文字にするときや、テレビでレポートするときにはそう表記してください」
ん? ちょっと待ってください。そう言われる代表が僕ですか?
即座にそう思いました。テレビ局だったら幹事局があって、新聞にも幹事社がある。その人たちに伝えてほしいことを、なんで僕に言うの?
でも、咄嗟に出てきたのが「すいませんでした」という言葉でした。なぜかわからないけど、「ごめんなさい」って僕が謝っていました(苦笑)。