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伊勢投手が成長を止めない理由

 存在感で最大値の伸び幅を示したのは3年目の伊勢大夢投手。クライマックスシリーズを含め実に74試合の登板。“開幕から21試合連続無失点”、“7月4日のジャイアンツ戦で8回途中から締めてプロ初セーブ”、“9月22日のジャイアンツ戦、3点リードの8回無死満塁でリリーフし3人を封じた魂の15球”などファンにとって至福の投球を重ねてくれました。

 タイガースとのクライマックスシリーズ2戦目では、1対0の7回1死3塁から登板し8回までパーフェクトリリーフ。「クールにベンチに戻るのではなく、チームを鼓舞したかった」と珍しくガッツポーズもしました。

マウンドに仁王立ちの伊勢投手 ©tvk

 伊勢投手の話は面白くて深いのです。

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 今年の春季キャンプで首脳陣から示された、8割の確率で投手有利のカウントを作る目標は「自分に言われたのだ」と考え模索。

 初めて、ブルペンで1日150球の投げ込みを行い「疲れても力まず、ボールが先行しない、自分の間合いで投げる感覚」を体得しました。伊勢投手にとっては投げ込んだ数が苦しい場面を乗り越える基盤の一つになった様です。

 疲労が蓄積しても「楽しめませんが、投げさせてもらう喜びを感じています」と発する言葉は、現役時代の木塚敦志投手コーチが「疲れていても、期待して使ってもらうのは投手冥利」と話していた日々と重なります。

 伊勢投手は入団間もない頃「将来ストッパーになりたい」と話しています。今年の夏改めて尋ねたところ「当時は怖いもの知らずの発言でした。でも、いつかは、という気持ちはあります。与えられてなるのではなく、山﨑康晃さんから実力で奪うくらい自分が頑張らないとチーム力に繋がらない」と。答えの一つ一つに伊勢投手が成長を止めない理由を垣間見ました。

ソト選手の日本語と石川さんのコミュニケーション能力

 DOCKでの姿こそありませんが、目線を上げ空が視界に入った時、ふと今月20日米国に戻ったソト選手が浮かびました。来シーズンは日本で6年目です。

 9月28日のドラゴンズ戦、頭にデッドボールを受けたダメージが気になっていたのですが、復帰した10月はクライマックスシリーズを含め16打数8安打。シーズン終了がもったいない数字です。通訳の天野祥さんによりますと、本人は「デッドボールの後打てるようになったよ」と笑顔でしたが、少し前から好調なサイクルにありデッドボールは強靭な体に影響を与えなかった様です。終盤に掴んだきっかけがあるならば、来シーズンは大きく数字を伸ばすかもしれません。

 余談ですが、ソト選手のヒーローインタビューで、毎回楽しみにしているのが日本語で発する「ありがとうございます!」。私達以上に、美しい日本語です。

ヒーローインタビューでのソト選手 ©tvk

 前出の天野さんのお話では「スペイン語と日本語は共通した音が多く、スペイン語圏の人は比較的きれいな日本語をマスターし易い」そうですが、それにしても見事です。

 加えて来日当初のソト選手にとっては日本語の先生が良かった。ロッカーが隣だった石川雄洋さん(現在アメフトのノジマ相模原ライズで活躍中)です。「石川さんは躊躇も遠慮もなくソト選手に日本語で話しかけました。ソト選手は一生懸命真似て理解してきた」そうです。

 ソト選手が日本語を覚える意欲と共に、石川さんが持つ無敵のコミュニケーション能力も凄い。

 今までとは質が違う悔しさを、まだ熱い時期に練り上げた成果こそ、1年後に目標を達成するための軌道に乗っていく。そう期待が膨らむ秋の1日でした。

 選手たちの取り組みにふさわしい様に、中継の準備も高い意識を持って始めようと思います。

 三浦監督が言う通り、5か月後、来シーズンはすぐにやって来るのですから。

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