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文春野球コラム

井川慶が語る、福留孝介と能見篤史。現役を引退するふたりの“すごみ”

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/10/05
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 10月に入り、プロ野球界はここからさらなる盛り上がりを見せます。

 クライマックスシリーズ――。そして、日本シリーズ。

 日本一を目指し、両リーグの上位球団がしのぎを削るワケですが、同時にこの時期になると毎年、少し寂しいニュースも飛び込んできます。

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 そう、選手たちの引退です。

 文春野球、今季ラストコラムは、かつて対戦したライバルと、ともに戦ったチームメイトの話を、少しだけしたいと思います。

阪神時代の福留孝介と能見篤史

「全力」で投げたボールを打ち返された、中日・福留孝介選手

 まずは、福留孝介選手。

 中日、メジャー、阪神、そして最後は再び中日でプレーした福留さんですが、僕にとってはやはり「ライバル・中日の主力打者」という印象が強いです。

 その中でも強烈に憶えていることがあります。

 何年の、いつの試合かまでは記憶にないんですけど……(苦笑)、中日戦で僕が先発したときのことです。先発をやっていたころの僕は、1試合を通じて「本気」で投げることはほとんどありませんでした。いつも9回を完投することを考えて、残りイニングと自分の体力を計算しながら投げていたからです。

 ただ、この試合は良いピッチングができて、ちょっと余裕ができた。そこで打席に立ったのが福留さんでした。

「よし、ここは全力で投げてみよう」

 当時、すでにセ・リーグを代表する打者だった福留さんを相手に、自分の全力がどこまで通用するか、試してみたかったんです。

 正直に言うと自信はありました(笑)。あのころの僕は、「全力」で投げたボールを打たれた記憶がほとんどなかったからです。

 ところが……。僕が思いきり投げたストレートを、福留さんはものの見事に打ち返しました。

「やっぱり、一流の打者はすごいなぁ……」

 マウンド上でそんな風に思ったのを、今でも憶えています。

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