ライオンズが苦しい。4月に蓄えた貯金はあっけなく底をつき、現在借金の数は4まで膨らんでいる(5月20日現在)。閉塞感ただよう試合が続くが、思い返せば昨シーズンも、その前も、こういう時期があった。頑張っても足掻いてもうまくまわっていかない、こんな時期が。

 こんな時に空気を変えるのは若い力なのではと期待せずにはいられない選手がいる。青山美夏人だ。

青山美夏人 ©時事通信社

 2023年3月31日、西武対オリックスの開幕戦。

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 2対1、1点リードの9回表、「ファイナル・カウントダウン」に乗せて青山美夏人がマウンドに上がった。開幕戦のクローザーを託されたのはドラフト4位ルーキー・青山美夏人だ。Risukeさんのコールにベルーナドームは沸いた。

 開幕戦での勝利目前。それもマウンドに立つのはプロ初登板のルーキーなのだ。チームが変わりゆくさま、プロ野球選手がつくられていくさまを目の当たりにして胸が躍る。この瞬間に鳥肌が立ったのは私だけではないだろう。ドキドキとかわくわくとか、それだけでは言い表せない想いで胸がいっぱいになった。

 開幕戦のクローザー、重要な場面で青山を送り込む提案をしたのは豊田清コーチだ。

 それもこれも、ライオンズは昨年までの「勝利の方程式」を解体し作り直さざるを得なくなっていたことが背景にある。昨シーズン35ホールドポイントで最優秀中継ぎのタイトルを獲得した絶対的なセットアッパー・平良海馬は志願の先発転向。平良と同じく35ホールドポイントでタイトルを分け合い、新人王も獲得した水上由伸も調子が上がらない。31セーブを挙げた増田達至も本調子とは言えない状態だった。

勝ちゲームの投手起用は「悩み」

 豊田コーチは開幕後、文化放送のインタビューで投手起用に関しこう話していた。

「去年とおととしは7・8・9回が決まっていたので、7回まで来たらもう大丈夫だという自信を持ってベンチで見ていたんですが、今年はそうはいかない。今年は7・8・9回を一度解体してゼロからやり直そうと決めていたので、(役割が決まるまで)もう少し時間がかかると思います」

 開幕直前、「終盤の起用は決まっていない。悩みです」と言っていたのは嘘でも大げさでもなく、本当だった。実際、練習の中でその日の調子を見極め、トレーナーからの情報も加味しながら起用を決めていく。

 そんな中で開幕戦のクローザーに選ばれたのがほかでもない、青山だ。起用パターンを模索する中でも、青山の開幕戦クローザーはもとより話し合われてきたことだった。

「すごく可能性を感じるピッチャーなので。後ろ(抑え)で投げるとなるとまだまだ足りないところはありますが、可能性の方が上回っていたので監督と話をして開幕戦で起用してみたんです」

 豊田コーチは青山の技術的な部分はもとより、メンタル面を評価し期待を寄せていた。普段から接していて落ち着きがあり、キャンプ、オープン戦と見る中でも浮ついたところがないのもよかった。クローザーとしての自身の経験から、青山には可能性を感じていた。