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551日ぶりの1軍マウンドへ。 私が巨人・中川皓太投手を“推す”理由

文春野球コラム ペナントレース2023

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“安定請負人”のプレッシャー

 このポジションの選手がチームにもたらす安定感は計り知れません。山口さんが60試合以上の登板を果たした9年間のうち5回がリーグ優勝、9年間すべてが3位以内のAクラスに入っています。

 中川投手がリリーフエースとして立場を固めた2019年からの3年間はリーグ連覇を含め、3年間すべてAクラスに入っています。

 逆に山口さんが大きく登板数を減らした2017年と中川投手が怪我でシーズンを通して1軍登板がなかった2022年は、どちらもチームがBクラスに沈みました。

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 2019年から3年間で162試合への登板を果たした中川投手。抑えをやっていた時期もありますが、前述の通り精神的負担がかかる場面の連続でした。

 そんな中川投手について非常に印象深いシーンがあります。

 リリーフエースとしての立場を築いた2019年の8月8日の中日戦。8回にマウンドに上がった中川投手は失点してしまい、同じ大学の先輩である大エース・菅野智之投手の勝ち投手の権利を消してしまったのです。

 交代を告げられた中川投手は、ベンチに戻ると涙を流しながらタオルで顔を覆いました。1回の登板でどれほどの責任感を持ってマウンドに立っているか、象徴的なシーンだと感じました。

 この年チーム最多の67試合に登板し、4勝3敗、17ホールド、16セーブ、防御率2.37を記録。侍JAPANにも選出されるピッチャーに駆け上がっているのも、こうした気持ちが要因となっているのでしょう。

 取材やインタビューでも柔和で優しい表情を見せることが多い中川投手。マウンドに上がっても闘志剥き出しの熱血漢というよりは、口を真一文字に結び冷静にボールを投げる姿が浮かびます。

 そうした姿の奥底にある熱い想いを、あの涙に垣間見たような気がします。だからこそ、僕の心に色濃く残っているのでしょう。

 昨年は腰の怪我で、中川投手の1軍登板は1試合もありませんでした。1年間投げられない怪我からの復活は、想像を絶する苦難の道だと思います。

我が推し、ここから再び

 かつて中日で中継ぎ投手として史上初のリーグMVPを受賞した浅尾拓也さんも、故障で1年間1軍登板がなかった2016年以降完全復活を見られぬまま引退されることになりました。僕の推しメン・山口鉄也さんも怪我で1軍登板0となった2018年に、そのまま引退されています。

 しかし、球界には復活を遂げた選手もいます!

 火の玉ストレートの藤川球児さんや、1002試合登板の記録を持つ岩瀬仁紀さんは怪我から復活。再びリリーフとして、数多くの試合でプレッシャーを背負いながらファンを沸かせました。

 ここに名前を挙げさせてもらった選手たちは全員タイトルホルダーであり、名球会メンバーも含む球界のレジェンドです。中川投手が残している数字はそこには及ばないかもしれません。しかし、僕が抱く中川投手への絶対的な安心感は、偉大なレジェンドたちに匹敵します。

 神宮球場で復帰登板を果たした3日後の20日には、東京ドームのマウンドへ帰ってきて1イニング無失点。翌21日にも同じく1イニングを無失点に抑え久しぶりのホールドを記録しました。

 僕はここから中川投手の「レジェンドへの道・第2章」が始まると信じています。専門的な知識や科学的な根拠があるわけではありません。強いて言うなら「推しメン」だからです。

 僕自身、推してもらうことで心も身体も強くなる経験を現在進行形で実感し続けています。このコラムを通して、1人でも多くの方が中川投手の歩んでいく背中を力強く「推して」くださるよう強く願っています。

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