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かつては“軽口”で済んだものが、今は“悪意”として当事者に届く時代に

 なにより、オールスターのファン投票結果は、12球団のファンが平等に与えられた「投票権」だ。決してタイガースファンにだけ有利な条件や、多くの投票権が与えられたわけでもない。今回の10人選出はファンがそれを行使した結果でもある。

 もちろん、今回の結果を受けて、何かしらの投票ルール改訂が行われる可能性もある。それが「より良い結果」「プロ野球がさらに魅力的になる」ことに繋がるのであれば、それは大歓迎だ。

 ただ、選出された選手にも、もっと言えばそうでない選手にも、数十万票というファンの“思い”が託されている。建設的な意見ならまだしも、そんな“思い”を踏みにじるような言葉は、口からも、キーボードからも、スマホからも発するべきではない。

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「選ばれた選手もかわいそう」

 本当にそう思うのであれば、そもそもそんな言葉自体、発するべきではないはずだ。

 もちろんこれは、筆者も含めたタイガースファンにも言えることだ。

 なぜなら、まさに今この瞬間、主にタイガースファンと思われる不特定多数の人間がファン投票結果に対する誹謗中傷と同じ――いや、それよりもはるかに酷い言葉を特定の人間に浴びせ続けているからだ。

 かくいう私自身、過去に不用意な発言から多くの人を悲しませ、怒りを買ってしまったことがある。

 SNSの発展によって、ファンと選手、球団、さらには見知らぬファン同士の距離は驚くほど近くなった。これまでは居酒屋で飲みながら身内同士で叩いていた軽口が、“悪意”へと姿を変えて当事者に届いてしまうようになった。

 骨折が判明した近本光司は難しいかもしれないが、ファン投票で選出された他の9選手には、オールスターの舞台で得票数というファンの“思い”を胸に、雑音など気にせず、精一杯プレーしてほしいと切に願う。

 もちろん多くのファンが、同じ思いを持っているはずだ。ただ“悪意”を持った人間の言葉は、なぜかよく響く。その声をかき消すにはまだまだ時間がかかるかもしれない。

 だからこそ、タイガースファンとして、野球ファンとして、これからも選手が最大限に実力を発揮し、プロ野球がより良くなり、なにより筆者を含めたファンがより野球を“楽しめる”ような言葉だけを発していきたい。自戒も込めて。

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