その差23歳、年齢は違えども、自分の意見をきちんと言う
「彼はそんなに大きな声でしゃべるタイプではないですけど、“僕はこう思います”と、自分の意見はしっかりと言ってくれるので、ちゃんとした会話が成り立ちます。年齢は違えども、自分の意見をきちんと言う。そこは同じ野球選手として、とても大事なところだと思いますね」
勝負の世界では年齢もキャリアも関係ない。それでも、当時19歳の内山が42歳の石川に対して、臆せずにモノを言うことは簡単なことではないだろう。そんな思いとともに、石川のこの言葉を本人にインタビューした際、ぶつけてみた。
内山は言う。
「キャッチャーとして、きちんとピッチャーと話をするのは大事だと思っているので、“聞かれたことはしっかり答えよう”って思いながらやっています。ただ聞かれたことだけではなく、自分の意見をハッキリ言うことはいつも心がけています。それはいいことだけじゃなくて、悪いところも、“今ここが悪いですね”みたいなところも、思ったことはちゃんとハッキリ言えるように、すごく意識しています」
長所を指摘するだけではなく、ときには問題点をハッキリと口にすることも大切なことだ。若くしてすでに、内山にはその意識が強いことがよくわかった。
「勝負強さはあると思います」と20歳の内山はためらいなく言った
このときのインタビューで印象に残っているやり取りがある。昨年のプロ初ホームランや、最終戦での4号ホームランの話題となり、「打率以上に勝負強い印象がありますね」と、僕が口にした際のものだ。このとき内山は何のためらいもなく言った。
「勝負強さはあるんじゃないかなって……。自分で“あるんじゃないかな”っていうのもおかしいかもしれないですけど、ここいちばんという場面ではしっかり(勝負強さが)出ているんじゃないかなとは思います」
繰り返す。本当に何のためらいもなく、内山は「勝負強さはある」と口にしたのだ。当時、プロ2年目、まだ20歳になったばかりのことだ。これから、本当のプロの厳しさに直面することだろう。実際に、今シーズンは今のところ2割台前半の低打率にあえいでいる。しかし、何の逡巡もなく「勝負強さはある」といってのけた若武者の力強い言葉は、僕の耳に心地よく響いた。
ここ数年、髙津監督、石川雅規に定期的にインタビューを行っている。その席上で、これまでもしばしば内山の話題となった。両者に共通する「内山評」は「とんでもない潜在能力を誇り、これからどれだけ成長するのか楽しみだ」という視線だった。
捕手と外野手の二刀流
昨シーズン終了後、僕は「ポスト中村悠平として、これから数年かけて研鑽を積んでほしい」と考えていた。しかし、髙津監督には「壮真を控えにしておくのはもったいない」という思いがあったのだろう。「捕手と外野手の二刀流」を決め、実戦を通じて鍛え上げていく道を選んだ。
その結果、外野手1年目にして、冒頭で紹介した大ファインプレーを披露することになった。外野手起用に関して、「どっちつかずになるのではないか?」「捕手としての勉強がおろそかになるのではないか?」という批判や不安もあるかもしれない。その気持ちも理解できなくはないけれど、やはり少しでも多く内山の打席を見たい。信じられないようなプレーを披露する外野守備も見たい。
そして、中村との併用を通じて、少しずつキャッチャーとしての勉強を積み重ねていってほしい。もちろん、中村には内山のための高い壁として、いつまでもレギュラーを死守し続けてほしい。内山壮真――ロマンの塊であり、これからさらに飛躍するであろうポテンシャルモンスターでもある。そんな彼の一挙手一投足を見るために、僕は今日も神宮に行く。
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