うだるような暑さが続く日本列島。「熱い!」と叫びたくなるような熱戦がもうすぐ繰り広げられる。野球好きにはたまらない、夏の風物詩――。第105回全国高校野球選手権大会が8月6日に開幕する。
楽天の主力選手たちの母校も各都道府県の激戦を勝ち抜き、甲子園にたどり着いた。今回は1軍で活躍する太田光(広島・広陵)、辰己涼介(兵庫・社)の高校時代のエピソードに触れてみる。
「友達はいなかったですけど」
青春真っただ中で白球を追い続けた日々の思い出を聞いてみると“辰己節”でこう返ってきた。
「記憶力が弱いので、あまり覚えていないんですけど、ただ、楽しかったというのは覚えていますね。友達はいなかったですけど」
まさかの「友達いない」発言には笑ってしまったが、自分が成長していく実感が得られていたことが楽しみに変わっていったという意味だろうと解釈して話を進めた。
「高校の時点では大学に行くことを決めていて、大学でどう目立とうかなということは考え始めていた。誰に勝ってるとかはなくて、(兵庫県内には)高校が多かったので、まずは社高校内で一番になりたいと思ってやっていました」
他校のライバルには目もくれず、まずは身近なライバルたちに勝つことだけを考えていた。出場機会を得て、試合で結果を残し、大学進学を決める。全てはプロになるため。着実にその目標へと進んでいった。
社は公立高校ながら環境面も充実。野球以外の競技ではサッカー場、陸上競技場を始め、トレーニングルームやトレーナーもいて、個々にあったメニューを組んでもらい、辰己も必死に体づくりに励んだ。
「高校時代が一番成長を感じた」という。「中学3年時に166センチだった身長も15センチくらい伸びた」と体格も一気にたくましくなった。「プロになるというのは(入学前から)決めていたので、現実味が帯びてきた時で、どこを磨けばプロになれるかなと考え始める時期ではありました」。辰己が3年となって迎えた最後の夏。2014年の兵庫大会は準決勝で神戸国際大付に0―3で敗れ、憧れの舞台へは届かなかったが、卒業後は立命大での4年間を経て2018年のドラフト1位で楽天に入団する。狭き門をくぐれた背景には社で育まれた下地と思考の成長が確かにあった。