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支配下登録を目指す31歳、ソフトバンク・奥村政稔を支える“負けず嫌いポジティブ”の精神

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/08/18
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みんなが羨む“負けず嫌いポジティブ”の精神

 ハートの強さはどこから来ているのか――。

「昔からもう、なんて言うんすかね。小さい時から負けず嫌いは負けず嫌いなんですけど、ポジティブだったんですよね」

 根っからのポジティブだったことを明かしてくれた。しかも、ただのポジティブではない。“負けず嫌いポジティブ”だ。受け止めた悔しさをプラスのエネルギーに変換したポジティブなのだ。

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 よく「悔しさをバネに」とは言うし、私も悔しさを原動力にするタイプだが、その原動力は時に「見返してやる」などと負の感情にもなりがちだ。そうすると、良さであるはずの「負けず嫌いさ」が憎しみ寄りの原動力になってしまう。私自身、そういう感情はたくさん抱いてしまった経験があるので、奥村投手の“負けず嫌いポジティブ”は本当に素敵だと思ったし、そのメンタリティを会得したいと思った。

 そう感じているのは、当然私だけではなく、近くで過ごしてきた若鷹もそうで、奥村投手の姿に感銘を受けていた。「うちの若い選手とかも聞いてくるんですよ。ポジティブの秘訣」と兄貴は笑っていた。ある育成選手は「奥村さんが弱音を吐いているところを見たことがない」と言っていた。悩んでいる時にはアドバイスをくれるという。経験も豊富だから、その引き出しも多い。「可愛がってもらっている」と感謝していた。やっぱり、こんな上司が居たらついて行きたい。

 そんな“負けず嫌いポジティブ”の精神で奥村政稔は創られてきた。人としても魅力的だが、選手としても個性が光る。「背負い投げは背負い投げです」と語る自身の投球フォームは、プロ入り前から大きくは変わっていないという。高校時代は柔道場で背負い投げの練習もしていたのだとか。真後ろから見ている人でも、球種の判別がつかないこともあるという多彩な変化球も持ち味。選手としても、人としてもとにかく魅力的な存在だ。

 奥村投手を語る上で、やっぱり触れたくなるのはプロ初のお立ち台だ。去年9月13日の本拠地でのお立ち台は、爆笑と感動の涙で心が忙しかった。抜群のキャラクター、飾らない人間味、家族思い。知れば知るほどみんな応援したくなるのが奥村政稔投手ではないだろうか。

 来季こそ、再び2桁の背番号を背負い、たくさんのファンに勇気と笑いを届けてくれることを楽しみにしたい。

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