「人気YouTuber」を目指すって……。鉄平さん、今度はどこに向かう気なのよ?
元・東北楽天の看板選手。今は地元きっての人気解説者。さらにステージにも立つギタリスト。この二刀流だけでも超レア。だってMLBでもバーニー・ウイリアムスくらいなのだ。
その鉄平さん。6月から冠番組を始めた。地元紙の河北新報オンラインで不定期に公開している。
「楽天の昔話を楽屋で鉄平さんがただゆるゆるとしゃべるだけの番組」
この新聞社、随分と懐が深い。緊張感のない番組名だし。チームの近況など聞きもしない。とにかく鉄平さんの脱力キャラを生かす。ただ思い出話の連続。素朴にしゃべるだけ。
この番組での鉄平さんの話し相手は、彼の全盛期に番記者だった私となる。なんだかんだで15年超の付き合いだ。
鉄平さんが長年表舞台で愛されてきた理由
番組の雰囲気はこんな感じだ。例えば「鉄平、東北のスターになる」の回。
話は2007年夏に遡る。前年に初の打率3割を記録。鉄平さんは勢いに乗り、初めてオールスター戦に出る。会場の東京ドーム、関係者入り口に到着。意気揚々とゲートを通過しようとするも、行く手を阻まれる。目の前に守衛さん。
「時間と所属をご記入ください」
えっ、選手? バイトじゃないの? くらいの顔で普通に一般人扱いだ。
「何ですか! こっちは仮にもファン投票選出されたパ・リーグ外野手なんだ」
そう思ったとしても、どやったりなんかしない。鉄平さんはむしろ先に折れた。
「楽天の鉄平と申しますが……」
「あ、失礼しました」
この守衛さんとのやりとりの一部始終を目撃していたのが私であった。
番組では大物感のなさを私に散々いじられる鉄平さん。さらに自虐ネタをかぶせる。
「東京ドームなら当たり前ですよ。だって自分、楽天の球場でも車で球場入りする時、守衛さんに体を張って行く手を遮られていたんですから。正直、『もうそろそろ顔覚えてよー』って思ってましたけど」
2009年打率3割2分7厘をマークし、東北楽天の日本人選手として唯一の首位打者。
実績としてはレジェンド野手と称されたっておかしくないのが鉄平さん。そんな鉄平さんのすごいところは天才的なバッティングセンスよりも「彼の異次元のいい人オーラこそ、すごいのだ!」と私は声を大にして伝えたいのです。
大物扱いを忘れさせてしまうほど、周りをほんわかとさせてしまう、のほほん感を。野球界の奥田民生と言いたいほどのゆるっと感を。それこそが、一流らしい風格、威圧感が彼の体から出てこない理由なんです。「守衛さん」ネタを披露した私にも、怒りもしない。
そういう人だから、鉄平さんは長年表舞台で愛されてきたのです。