その日の夜中、ホストからお礼の電話でこう言われた。
「ある客から『次のイベントの時に、500万入れるから、同棲をしてほしい』と言われている。Sと一緒にいたいから、断りたい。500万は諦めようと思う」
夜の遊びに慣れていない女性に、一度目の飲食代を少額にして警戒感を解き、次に高額な金額をちらつかせ、女性の恋愛感情を利用して、他の客と競わせることはホストの常套手段だ。
「500万円と言われたとき、自分の貯金を言ってしまった。うまく聞かれたと思います。地元で働いていたときにコツコツと貯めた定期預金などが200万円近くあったんです。バカ正直に言ってしまいました。店に来てほしいのではなくて、あくまでも個人的に貸してほしいと言われていました。足りない金額は、『消費者金融で借りればいい。一緒に行こう』ともホストに言われました」(Sさん)
コンビニATMで現金をかき集める
6月初旬のある日、Sさんは歌舞伎町のコンビニATMで地元銀行に貯金していた口座から50万円をおろしてホストに渡した。翌日、ホストが教えてきた新宿・歌舞伎町にある消費者金融が複数社入ったビルへ向かった。その日ホストから「一緒におろしにいくから」と歌舞伎町の靖国通りで待ち合わせて、一緒にATMに向かった。
1社目で与信満額の50万円を契約して、階下の別の消費者金融、また階下とぐるぐる廻り、合計4社、200万円用意できるようになった。
18時9分に50万円、18時10分に50万円、18時11分に50万円、18時12分に50万円を引き出し、そのまますべてホストに渡した。そして、「ありがとう、明日定期預金もおろしてほしい」と言ってホストは店へ出勤していった。Sさんは、返済の恐怖と彼を信じるという複雑な心境だったという。
また翌日、Sさんは、定期預金していた地元銀行の東京支店に1人で向かった。
「満額はおろせないと思う」とホストにLINEで連絡すると「整形代って言えばいいから」とアドバイスがあった。結局2行から、139万円を引き出した。
おろしたことを彼に連絡すると「今、会合で銀座にいるから近くに来て」と言われ、銀座の路上で139万円を渡した。Sさんは、「あくまでもホスト個人にお金を貸している」という認識だった。
Sさんもお金を借りるきっかけになったイベントに呼ばれていた。この日も銀行で40万円をおろす。