フリーアナウンサーの久米宏さんが、肺がんにより1月1日に死去した。久米さんは2024年4月、「文藝春秋」の対談に登場し、映画監督・西川美和さんを相手に赤裸々な「テレビ愛」を語っていた。晩年、メディアにほとんど登場しなかった久米氏の貴重な対談の一部を紹介します。
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「悦ちゃん」は週2回ぐらい
西川 久米さんが最近のニュース番組を見て、「自分だったらこう喋るのに」と思うことはありますか?
久米 うちの奥さんと同じようなことを聞きますね。
西川 そうですか(笑)。
久米 いちばん思うのは「もうちょっと普通に話せないのか」ということですよ。みんな明らかにテレビ向けの話し方でしょ。どこかで見たような喋り方になっちゃう。
僕が19年間、心がけていたのは、家族や友人に向かって話すのと同じようにしゃべること。でも、大勢の人が見ている中で、カメラというモノを向いて、普通にしゃべるのは死ぬほど難しいんです。
西川 不自然な動作ですものね。
久米 そうです。あたかもそこに人がいるように話すのは技術が必要なんです。わざとトチってしゃべることもしました。2カ月に1回ぐらいは、話しているうちに何が何だか分からなくなって、話し始めと結論が違うっていう。その方が人間っぽいから。
普通に生きていて、NHKのアナウンサーみたいにきちんと喋る人っていないじゃないですか。あと、遊びも大事。小宮悦子さんのことをたまに「悦ちゃん」と呼んでいましたが、あれもわざと。
西川 あれを聞くと、エッ、この2人どんな関係なんだろうと、ちょっと心がざわついたりして。
久米 そうそう。連発してはいけないから週に2回ぐらい、自然な感じで口にする。言った後にアッと驚いたフリをする。いやらしい演出だけど、楽しいじゃないですか。テレビって所詮は遊びなんだから。
西川 最近、久米さんがお好きな番組はあります?
久米 生放送の深夜の通販番組ですね。
西川 え! 意外です。




