なぜゴール前で絶好のチャンスに見えるのに、選手はシュートを打たないのだろうか。スタジアムやテレビの前で「打て!」ともどかしさを感じた経験は、誰にでもあるはずである。しかし、その一見消極的な判断の裏には、統計学が導き出した驚くべき勝率のセオリーと、カウンターを恐れる緻密なリスク管理が潜んでいるのだ。

 スポーツライター・木崎伸也氏の著書『世界一やさしいサッカーの見方 40個のポイントで試合が劇的におもしろくなる』(朝日新聞出版)より一部を抜粋し、サッカー選手がシュートを打てそうなのに打たない理由を紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

©JMPA

◆◆◆

ADVERTISEMENT

絶好の得点チャンスでシュートを打たない理由

「(シュートを)打て!」

 サッカーを見ているときに、誰もが一度は口にしたことがあるフレーズではないでしょうか。最近は「足を振る」というシュートの動作にちなんで「振れ!」という人も増えている印象があります。ゴールに近づいていて、打てそうなのに打たない。

 ファンやサポーターにとって、サッカーの七不思議のひとつでしょう。

 日本だけでなく、ヨーロッパのスタジアムでも「打て!」という声をよく耳にします。

 なぜ打てそうなのに打たないのか?

 その心理は、先ほどの「縦パス」のリスクと基本的に同じです。

 シュートが入って得点になったら万々歳ですので、入らなかった場合を考えてみましょう。問題になるのは、シュートがブロックされたときです。

 シュートの跳ね返りがどこへ行くかを予測するのは難しく、「ガチャガチャが回された」ような混乱状況が生まれます。

 相手に渡ったときにすぐに奪い返せればいいのですが、そうでなければカウンターを食らう危険性があり、カウンターを防げたとしても自陣に押し下げられてしまいます。

 こういうリスクがあるので、シュートを躊躇してしまうのです。