「いい球、投げてるじゃねえか」。2回、5点を失った川崎に落合だけが笑った。
(すずきただひら 1977年千葉県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、中日、阪神を中心にプロ野球担当記者を16年経験。2019年よりフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』、取材・構成担当書に『清原和博 告白』、『薬物依存症』がある。)
開幕戦のプレーボールが迫っていた。2004年4月2日、川崎憲次郎は午後5時を過ぎるとナゴヤドームのロッカーで真新しい背番号20のユニホームに袖を通した。3年前、FAで移籍した時にもらったこのチームのエースナンバーだ。
着替えをしていて、ふと気づいた。右肩が異様に前に出ているのだ。まるで関節から外れたように、あらぬ場所にいってしまっている。そこに疼くような痛みがある。
「ルーズショルダー」。球界ではそう呼ばれていた。幾多の投手を廃業に追い込んできた症状だ。それを見れば、自分の肩の内部がどうなっているのかは察しがついた。車のハンドルを握っている時、朝目覚めた時、川崎はこの3年間、何気ない瞬間にこの肩を目にしては、その度に絶望させられてきた。
ただ不思議と今は、心が揺れない。
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source : 週刊文春 2020年9月3日号