【前回までのあらすじ】大宝テレビのディレクター・加藤大地が大御所芸人のウォッチャー目黒にレイプされた。同局のニュースキャスター・鷲尾粧子(50)と、加藤の親友の「週刊文春」記者・速水理央(34)は各々この件をニュースにしたいと考え、理央は取材を進めている。同時に理央は、高校時代に親友二人が揃って飛び降り亡くなった過去の真相解明にも動き出す。
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いわゆる仏壇は、なかった。居間の一隅に、本棚と並んですっきりとした木製のシェルフが設えられ、写真が飾られている。通された理央はまず線香を上げ、手を合わせた。
額縁の中からセーラー服姿の美貴が笑いかけてくる。さっき部屋で昔の写真を見た時と同じく、
(こんな子だったっけ)
と思う。きりりと太い眉の下、黒々とした双眸にひたと見つめられ、理央は思わず目をそらした。
写真のそばに生けられた花に、春が近いことを知る。お供えのお菓子にも、仄かにラベンダーの香りのする線香にもそれぞれ、娘への想いが込められているのが伝わってくる。
「待たせてごめんなさいね」
美貴の母親の麻里子が、紅茶をトレイにのせて運んできた。どうかお構いなく、と告げてあったのだが、とりあえずは勧められるまま、ソファに腰を下ろす。名刺を出すべきかどうか一瞬迷い、そんな自分に呆れた。今日は取材で遺族の家を訪れているわけではない。
「おばさま、ごめんなさい。ご挨拶がこんなに遅くなって……」
頭を下げた理央に、麻里子はかぶりを振ってよこした。
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source : 週刊文春 2026年4月9日号






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