【前回までのあらすじ】ディレクターの加藤が芸人のウォッチャー目黒に犯されたことを知った大宝テレビのニュースキャスター・鷲尾粧子(50)と加藤の親友の「週刊文春」記者・速水理央(34)。目黒は十八年前に理央の親友たちをもレイプしていた。粧子はその現場にいた目黒のマネージャーと、加藤と親しくしていたらしい北島という男が同一人物である可能性を知る。
第1回はこちら
前回はこちら
*
音声スタッフが、粧子のジャケットの衿元にピンマイクを着ける。露草色のスーツに合わせ、風防のカバーも青色だ。
トランスミッターを受け取り、ジャケットの中を通して後ろへ回し、クリップをスカートの後ろに挟みこむ。ブラウス越しにあたる金属の冷たさが体温に馴染んでゆく。
『本番、五分前です』
スポットライトの降り注ぐ放送席のカウンターには、画面の下手にサブキャスターの浅井マリリンが、上手には社会学者でレギュラー・コメンテーターの有馬誠二がスタンバイしている。中央の椅子に腰を下ろした粧子は、手もとに進行台本を広げ、フロアを眺め渡した。
居並ぶカメラの後方で、出ていこうとする報道局長をつかまえ、杉山プロデューサーが何か耳打ちするのが見える。得意満面だ。
「腹立ちますよねえ」マリリンが、微笑んだまま舌打ちをした。「死ねばいいのに」
粧子もつい失笑する。「同感」
初回登録は初月300円で
すべての記事が読み放題
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2026年10月8日号
お気に入り記事