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棋士にとっての「成人」|杉本昌隆

師匠はつらいよ 第37回

杉本 昌隆
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 1月10日は成人式であった。スーツや晴れ着姿の新成人達。夢と希望に満ちた表情が目に浮かぶ。

 私の地域の小学校では、小学4年生(10歳)の授業で「2分の1成人式」なるものがある。将来どんな大人になりたいか、子ども達が授業参観日にそれを発表するのだ。子ども本人より保護者に感慨がありそうなイベントである。

 そういえば成人の年齢は今年の4月から18歳に引き下げられるらしい。世界的な標準がそうなのだとか。とはいえ、成人式も18歳からだと高校3年生の新成人(書いていても違和感がある)は受験シーズンまっただ中である。

 来年は18歳から20歳までの合同成人式となると、調整も大変だ。おまけだが、前述の2分の1成人式は小学3年の9歳になるのか? 色々と気になるのである。

 私の予想は成人年齢が18歳、成人式はしばらく20歳のままだが、はたしてどうなるだろうか。

 私たち将棋の世界では、20歳は修業中の身である事も多い。私の20歳は奨励会三段。希望に満ちた若者……では一応あったが、三段で2年ほど足踏みをしており(自分は本当に棋士になれるのか?)と焦り始めた時期でもあった。

 地元の成人式に顔を出し、偶然会った昔の同級生に何気なく言われた。

「あれ? まだ将棋続けてたの?」

 全く悪気のない一言。たしかにプロでない奨励会員の存在や認知度など、興味が無ければ全く分からない。

(そんなものだよなあ)

 憂鬱になりつつも妙に納得した20歳の思い出。私にとって自分の成人、一人前は棋士になった21歳である。

 影あれば光あり。弟子の藤井聡太竜王も今年の7月には20歳になり、来年には成人式を迎える。

 藤井竜王は成人式に出るのだろうか? そうなったら皆喜ぶだろうなあ。

「一緒に写真撮ってください」

「サイン貰えますか?」

「今日はなぜ和服じゃないのですか?」

 こんな問いかけが容易に想像できる。

 忙しい藤井竜王、出席は現実的に想像しにくいが、もしもあってもゲスト出演だろうか。

 式典もそうだが、色々なことが可能になる20歳そのものは大きな節目。この話題はまたいずれ。

 人物を語るのに年齢はさほど意味を持たないが、一つの目安なのも事実。お正月に放送された東海テレビの「藤井聡太19才」。彼が14歳のときからほぼ毎年続いている特別番組だ。

 藤井竜王の話題は毎年尽きることなどない。数十年後、それこそ彼が私ぐらいの年齢になったとき、お正月に年一回の長寿番組が見られるかも知れない。

「藤井聡太53才」

 う、何か番組タイトルが重たい。やはり若いってそれだけで素晴らしいことなのだと再認識した。今年成人式を迎えた皆さんも、ぜひ充実した年を過ごしてください。

 現在、王将戦7番勝負で渡辺明王将対藤井竜王の激闘がスタートしている。十代最後の年の竜王の戦いぶりにも注目である。

イラストレーション 近江カズヒロ

source : 週刊文春 2022年1月20日号

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