「シンデレラ」になれなかった王者

「笑い神 M-1、その純情と狂気」第20回——10年という戦いの果てに、笑い飯は一体何を手にしたのだろうか。

中村 計
エンタメ 芸能

 プロデューサーの辻史彦は、泣きながらD卓に走った。D卓とはディレクター陣が控えている副調整室、いわば番組の指令室だ。

 朝日放送(ABC)の社員として、辻は、第1回大会からM-1に携わってきた。

「笑い飯が勝ったんだっていう気持ちと、M-1が終わるんだという思いと、二つのことが重なって……」

 2010年12月26日。第10回にして、最後の大会となるはずだったM-1決勝が開催された。

 最終決戦における各審査員の投票は、その頃、こんなからくりがあった。辻が説明する。

「MCの今田(耕司)さんが審査員に『ボタンを押してください』って言う前に、じつは事前に誰に入れるかを紙に書いてもらっていたんです。発表のとき、(大型ビジョンの)審査員の名前が裏返って、そこにコンビ名が書かれているという仕組みになっているのですが、早めに知っておかないと、そのCGの調整が間に合わない。その紙を集めて、D卓に運ぶ役を担当していたので、僕は世界でいちばん早くにチャンピオンを知ることができる立場にいた。D卓に入ったときは、思わず、『優勝、笑い飯!』って叫んでましたね」

 

 すると、50人前後のスタッフですし詰め状態になっていたその部屋は、どよめきと大きな拍手で包まれた。辻曰く「ほとんどのABC社員が涙ぐんでいた」という。

2カ月99円で
この続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題

2024GW 特大キャンペーン 誰でも月額プラン最初の2ヶ月99円 4/24(水)〜5/7(火)10:00
  • 月額プラン

    99円/最初の2カ月

    3カ月目から通常価格2,200円

    期間限定

  • 年額プラン

    22,000円一括払い・1年更新

    1,833円/月

※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

有料会員になると…

世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!

  • スクープ記事をいち早く読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
  • 解説番組が視聴できる
  • 会員限定ニュースレターが読める
有料会員についてもっと詳しく見る
  • 0

  • 0

  • 0

source : 週刊文春 2022年4月7日号

無料ニュースレター登録はこちら

今すぐ登録する≫

期間限定キャンペーン中!月額プラン2カ月99円

今すぐ登録する≫