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スターへのタイミング

「笑い神 M-1、その純情と狂気」第21回——全国区を夢見る芸人にとって、いつ東京進出するかは難しい問題だ。

中村 計
エンタメ 芸能

 解約するか否か。引くに引けない理由を、笑い飯の哲夫はこう語る。

「僕が言い出したんですよ。『東京にも家借りよ』って。だから、僕から『もう引き払うわ』とは言いにくい……。そんなんしたら、僕、めっちゃわがままじゃないですか」

 

 笑い飯の2人は現在、大阪に住みながら、東京にもワンルームマンションを借りている。東京の住まいを利用するのは「月1、2回」(哲夫)程度。ならば、ホテルに宿泊した方が、はるかに経済的だ。

 大阪吉本に所属しながら、いつかは全国区のスターとなる日を夢見る若手芸人にとって、どのタイミングで東京へ移籍するかは、じつに切実で、じつに難しい問題である。

 もっともスムーズなのは、M-1で脚光を浴びるなど全国的な知名度が急上昇したときに、その勢いを駆って拠点を移す方法だろう。

 笑い飯にも、そのタイミングはあった。もっとも弾みがついたのは、2003年のM-1決勝後だった。

 02年のM-1決勝でセンセーショナルな全国デビューを飾り、翌年は『奈良県立歴史民俗博物館』という伝説のネタで、前年を超える大爆笑をかっさらった。哲夫が振り返る。

「あの年のM-1直後、サバンナさんとお仕事さしてもらって。そんときに八木(真澄)さんが真顔で言うてくれはったんです。『テレビの漫才番組史上、いちばん笑かしてたんちゃう?』って」

 優勝は1票差で惜しくもフットボールアワーに譲ったものの、インパクトという意味では、笑い飯はフットボールアワーを上回っていた。

 哲夫は小さく悔いる。

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source : 週刊文春 2022年4月14日号

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