「何でだよ!」
スリムクラブのツッコミを担う内間(うちま)政成は、やや切れ気味にツッコんだ。ステージ上、コントの最中のことだ。内間のツッコミで、せっかくボケで起きた笑いがすっと引く。そんなことが何度か繰り返された。
負のループに業を煮やしたボケ役の真栄田(まえだ)賢は、左側にいた内間の肩を右手で強くつかんだ。身長183センチでいかにも屈強そうな真栄田の声は喉を潰したミュージシャンのように嗄れている。
「もういい! ツッコまなくていい! 何もしなくていいから」
内間も身長180センチと長身だが、真栄田とは対照的にいかにも頼りなげで、ひょろりとしている。
ただし、そこでコントが終わるわけではない。ツッコミを禁じられた内間は、意味不明な言葉を発し執拗に絡んでくるキャラクターを演じる真栄田に対し、オロオロするばかりだった。客席から失笑が漏れる。
何もするなと言われても舞台に立っている以上、そうはいかない。用意してきた言葉はすべて「ツッコミ」に相当する。突然のツッコミ禁止令に、何も言葉が浮かんでこない。追い込まれた内間は、真栄田のボケに対し、反射的に返した。
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source : 週刊文春 2022年3月31日号