同性婚を認めていない現行法は合憲という判決が大阪地裁によってなされた。曰く、婚姻とは男女が子を産み育てながら共同生活を送る関係のことを指すのだと言う。ちゃんちゃらおかしくて開いた口がふさがらない。血の繋がりってそんな大事か? そんな家父長制ずぶずぶの価値観からすれば『の、ような。』で描かれている彼らの関係は家族の風上にもおけないことだろう。けれど、私は何度読んでも、それは家族の営みであるとしか、思えないのだ。

 30歳を過ぎて買ったマンションで一人暮らしをしながら、作家として締め切りに追われる生活を送る希夏帆(きなほ)の元に、恋人の愁人(あきと)に連れられ中学2年生の冬真(とうま)と5歳の春陽(はるひ)、二人の子どもがやってきた。彼らは愁人の親戚。両親を交通事故で失ったばかりの二人が、親族間で押し付け合われているのを見かね、引き取ったのだという。連絡一つせず自分の家でもない所に連れ帰るという愁人の暴挙に憤りつつも、希夏帆は文句をぐっと飲みこみ、子どもたちとの同居生活を即座に決意。二人が少しでも居心地よく過ごせるようにと尽力する。なぜなら、それが希夏帆の思う傷ついた子どもを前に、大人がとるべき態度だから。子どもたちに雨風しのげる屋根をあたえてあげられる自分をほめようとすら考える彼女の姿勢に、大人が大人であるってこういうことだよなあ、と眩さを感じた。

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source : 週刊文春 2022年7月14日号