元首相の狙撃事件には私も非常にショックを受けました。そして、つい「犯人はどんな人物なのか」と考えを巡らせてしまいました。「反安倍(的な思想の人)がやったに違いない」と反射的に考える人も当然いるだろう、とも思いました。

 ところが、事件直後、方々から上がった意外な言葉に私は驚きました。

 まず八幡和郎は、事件報道からたった2時間後、犯人の素性も全く分からない状況で「安倍狙撃事件の犯人は『反アベ無罪』を煽った空気だ」なる論考を寄せました。彼は、「特定のマスコミや『有識者』といわれる人々が、テロ教唆と言われても仕方ないような言動、報道を繰り返し、暗殺されても仕方ないという空気をつくりだした」のが事件の原因であり、「犯人がいかなる人物かは、あまり重要でない」「犯人が左派でも右派でも個人的な恨みをもった人であろうが、精神に障害を抱えた人であってもそれが許されると思わせた人たちが責められるべきである」と、むちゃくちゃな論法を用いて、「安倍さんを悪者扱いした人たちが悪い」という突拍子もない説を唱えました。

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source : 週刊文春 2022年7月28日号