(かとうのりこ タレント。1973年、三重県生まれ。1992年に歌手デビュー。アイドルとしてお茶の間で人気を博す。テレビやラジオ番組の出演の他、エッセイの執筆でも活躍。近年は野菜作りにも勤しみ、畑仕事の様子をYouTubeチャンネル「加藤紀子 畑チャンネル」で発信中。)

 

 上京してから30年ほど経ちますが、10回以上引っ越しているんですよ。というのはすぐに家がバレてしまうから。深夜にラジオの生放送を終えて帰宅するとファンの方が待っていて「サインください」って。20代のうちは、借りていた部屋の契約を更新したことがほとんどなかったくらいです。

 アイドルとしてデビューし、エッセイの執筆などでも活躍する加藤紀子さんは、1973年、三重県鈴鹿市生まれ。保育園の卒園アルバムに「ピンク・レディーみたいになりたい」と書くほど、歌手にあこがれていた。

 17歳で上京したので、鈴鹿市については帰省して改めて知る良さも多いんです。実家は2階建ての戸建てで、すぐ裏の田んぼは今でも蛍が飛ぶほど自然が豊かな場所。中学時代のマラソン大会でサーキットのレーシングコースを走ったのは、鈴鹿市民の特権でしょうね。

 両親は隣町の四日市市で飲食店を営んでいました。昼は定食屋、夜は居酒屋だったので、4歳上の兄と私の夕食を母が作りに帰って来て、また店に戻って、という暮らし。

 定休日は日曜日だけで、父とは話す時間があまりありませんでしたが、交換日記をしていました。「お兄ちゃんが意地悪する」とか書いて寝ると、「お兄ちゃんへ。それはよくないことだよ」、「紀子へ。それは告げ口だよ」と朝には返事が書かれていて。会話はなくても、日記のやりとりで教えてもらうことは多かったです。

 高校生になると、歌手を目指して名古屋まで歌の学校に通い、3年生になった90年、伝手をたどって単身上京。「いい加減な気持ちでやらない」と父親と誓約書まで交わし、夜間高校に通いながらデビューを目指す生活をスタートした。

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source : 週刊文春 2022年9月15日号