「天災は忘れた頃にやってくる」。先日の私はそれをつくづく痛感した。
静岡県の富士宮市内での講演を翌日に控えた金曜日のこと。名古屋から新富士駅までは新幹線で約1時間半。そこから車移動のスケジュールだが、台風15号の影響を考えて私は前日の夜に名古屋駅に向かった。
案の定、新幹線のダイヤは大幅に乱れており、辺り一帯が満員電車のようである。とはいえ私はまだ油断していた。時間はタップリあるのだ。たとえ15時間後に到着でも問題なし。電車さえ動いてくれれば……。
だが動いてくれなかった。上り列車運休のアナウンスは夜の10時過ぎ。翌日に復旧する保証もなく、私は慌てて関係者のK山氏に電話で相談する。
「自分の車で現地に向かいましょうか?」
「大雨で高速が通行止め、危険です」
自己判断はかえって事態を悪化させる。ネット情報では、目的地手前の地図が赤色に染まり、警報も次々に出されていた。
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source : 週刊文春 2022年10月13日号