ジャニーズ(という名称の団体はもうないが)も宝塚歌劇団ももうなくなっていい、と言う人もいる。私は、今『ブギウギ』で注目されているOSK日本歌劇団のファンだが、仮に宝塚歌劇団が解散する、というような事態になったとして、じゃあOSKに客が来てウハウハかといえばそんな単純な話ではなく、宝塚という大木が倒れたら「女性のみが演じる歌劇」という文化が衰えて共倒れになると思う。なんでも簡単に「ダメなものは消し去れ」ですむ話ではない。
しかし、いったんこういう「事件」になってしまったからには、「令和の常識に照らして正しい」運営が求められるのは当然である。
今回の宝塚の問題は「ひどい条件での労働」と「パワハラ」だと思う。歌劇団は「労働条件」については「問題は無しとしない」、しかし「パワハラはない」という立場で会見をした。会見での、劇団や阪急関係者の態度が悪かったということには目をつぶったとしても、劣悪な労働条件とパワハラは不可分なものだろう。「パワハラとは認められない」とか言い切っていいのか。そこで「言い切らざるを得ない」というところに、劇団の歪みがある。
NHKの『かんさい熱視線 あるタカラジェンヌの死』、近畿地区のみで放送だが、現役劇団員が、声はもちろん変え、たぶん洋服もふだん着てないようなものを用心して着込んで手袋までして、ガッツリ誰だかわからないようにして証言した。「(下級生に)厳しく傷つく言い方をしてしまった」「自分も上の人にされてきている」「下の人もそれを経験するべきだと思ってしまって」……。
これは「110年の伝統というのは、正しいことも間違ったことも、同時に伝えてしまうものだ」ということを示す、たいへんわかりやすい言葉だった。
「さすがNHKは踏み込んだ番組をつくる」と言いたいところだが、じゃあそれを「令和の今、どのように改善していくのか」を劇団および視聴者に突きつけなきゃいけないだろう。でも番組を見ていたら、早稲田大学教授が出てきて「演者の労働組合が必須」「ブロードウェイでは労組に入ってないと舞台に立てない」とか、ほぼ原稿を読み上げるような感じで述べて終わった。いや、それは今までもさんざ聞いた意見なのだが。しかしそうはなっていない日本、そして宝塚歌劇団についてつっこむところだ。こんなわかりきったようなまとめのまま番組終わられて消化不良感半端なし。
『クローズアップ現代』もそうだが、NHKの30分番組は「えらそうに見えるが実は踏み込みが浅い」んだ。30分じゃたいしたことできんよ。宝塚問題については『NHKスペシャル』で改めてつっこむべきだ。ファンクラブ問題とかとともに。
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source : 週刊文春 2023年12月28日号