『虎に翼』の評判が良い。主人公の寅子(ともこ)が美人ではなく(伊藤沙莉が美人じゃないと言っているのではないよ)塩辛声なのがいい。弁護士を目指す仲間たちも、絶妙に「美人じゃない」人が普通に存在して、その不美人さが魅力になっていく。そういうところにドラマのリアリティを感じてしまう。「ヘン顔で男に殴りかかる」「それをスローモーションで強調」とかチャラけた演出もあったりするが、基本の人物造形がしっかりしているので脱線はしても転覆には至らないというか。

 そんな好評の『虎に翼』に堂々と挑戦状を叩きつけた(つもりかどうか知らないが)テレビ朝日、の『JKと六法全書』!

 同じ「年若き女性が法曹の世界に挑む」話なのにこうまでちがうとは。かたや「日本で最初に女性弁護士になった人をモデルにしたドラマ」、かたや「高一で史上最年少司法試験合格し弁護士になった女子高生が活躍するドラマ」である。私はこれを『羽鳥モーニングショー』内の番宣で知った。主役の幸澤沙良とその祖母役の黒木瞳が出てきて「女子高生弁護士と、やり手の弁護士の祖母」って2人並んでる絵面がすごかった。「マジメにドラマ作る気あるのか」と言いたくなるような、現在のテレビドラマのダメさを煮詰めたような絵面。

©beauty_box/イメージマート

 しかし番宣だけで判断してはいかんと見てみることにした(結果的に素晴らしい番宣が機能したか)。冒頭からJKが牛の弁護をしている。牛の冤罪を晴らすのであるJKが。なぜならJKは弁護士だから。

 青森から上京したJKは満員電車で痴漢を発見、「この人痴漢です!」と騒いだら人違いでそのまま逃げ出してる。いいのか弁護士がそれで。その間違えられた男がJKが所属する弁護士事務所の先輩のヤメ検、事務所でバッタリ会って2人で「あー!」と驚いてる。私も驚いたよまったく。

 初回は、このJK弁護士(略してJKB……)が、痴漢の罪を着せられたインフルエンサーの弁護をして検察のあくどいやり口を暴き無罪を勝ち取り、祖母の黒木瞳が目を潤ませるというお話であった。検察が悪なのは朝日の矜恃か、と思わされたりしたが、それよりももっと、何か不思議な気持ちになるドラマだった。

 というのは、このJKも、先輩ヤメ検弁護士も、やり手の祖母も、正体不明の農民ぽいが実は弁護士らしい祖父(これが柄本明)も、ある意味ものすごく「今どきのドラマの、登場人物」っぽくて、その意味でへんなリアリティを感じてしまった。いやドラマのリアリティは何もないんだが、テレビを見ながら「ねーよ!」と文句つけつつなんか頭がぼーっとなって最後まで見ちゃったというか……。こういうドラマが不滅なのはそういう理由なんだろうか。

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source : 週刊文春 2024年5月16日号