このまま今の会社に勤め続けていいのだろうか? そんなモヤモヤとした悩みを抱えた人に向けた、自身の市場価値の分析方法や、会社の見極め方、そもそも転職すべきかどうかの判断基準といった、転職にまつわる「思考法」を物語仕立てで伝える本が人気だ。
「著者も僕も転職経験があります。そこからお互いに感じていたのが、ロジックだけでは転職は考えられないということでした。『育ててもらった上司がいる』『今の会社も嫌いではない』などの事実から生じるうしろめたさも、重要なんです。そんなエモーション(感情)の問題も踏まえた考え方を伝えるため、著者のアイデアで、いわゆるビジネス書の体裁ではなく、小説形式を選びました」(担当編集者の井上慎平さん)
こうして生まれた迷える主人公・青野が、転職を真剣に考えるうち、気弱な自分の殻を破り、勇気をもって上司の不正に立ち向かえるほどに成長する姿は、立場を超えた共感を誘う。
「『これは働き方ではなく、生き方の本だ』という反響があったのですが、まさにそこが目標のひとつでした。今、とにかく転職を煽る本は多いです。そうした極端な主張を読むと気持ちがいいのも理解はできます。でもこの本は、あくまで転職という選択肢を持ち、いつでも辞められる状況を作ることで、会社と自分が対等に向き合えるようになることの大切さを伝えたかったんです」(井上さん)
2018年6月発売。初版6000部。現在8刷10万部