誰もがいつかは向き合わねばならない「死」を、哲学的に考察する翻訳本が売れている。原著はイェール大学の人気講義を書籍化した大著で、日本語版はそのエッセンスを著者監修の元で凝縮した「縮約版」。
「哲学的な死の考察というと『魂とはなにか?』といった形而上学的な議論から始まりがちです。原著の前半もそうした内容で、魅力的ではあるものの、やはり後半の『死と自分がどう向き合うか?』の具体的な議論の方が日本の読者には重要だと感じました。そこで著者に前半部を割愛したいと相談したところ、その内容の要約文を書き下ろし、さらに、後半部の、前半を踏まえないと読みづらい箇所に手を入れてくださった。著者自身が日本の読者を強く意識し、死を通して人生を考えるというテーマが鮮明になりました」(担当編集者の宮本沙織さん)
本書で主に展開されるのは「死」の「価値論」。「死はなぜ悪いのか」「可能だとしたら不死を手に入れたいか」など、刺激的な論点が詳細に考察される。
「昨今はいろいろなことがインターネットで調べられます。簡単なノウハウを学ぶのはそれで済みますが、やはり『死』のようなテーマは、検索して出てきた情報だけでわかったつもりにはなれない。本は自己対話のツールとしてよくできています。これからも本書のように考えさせる内容は、求められ続けるのではないでしょうか」(宮本さん)
2018年10月発売。初版1万3000部。現在6刷12万部