記録的な酷暑が続いていた8月下旬、岐阜市にあるY&M藤掛第一病院で、80歳代の高齢患者5人が相次いで死亡するという痛ましい事件が発生した。世間ではエアコン(冷房)の故障を放置していた病院側の対応に批判が集まっているが、この事件からは超高齢社会の底部に横たわる“やるせない現実”も浮かび上がってくる。
Y&M藤掛第一病院は医療療養病床と介護療養病床を持つ、慢性期対応のいわゆる「長期療養型病院」である。主な受け入れ患者は、
1、急性期病院から転院を迫られている高齢者
2、介護施設の空きを待っている高齢者
3、自宅での介護が困難な高齢者
とされているが、これらの患者像からは同病院が老病に倒れた高齢者やその家族らにとっての駆け込み寺的な存在であることが窺い知れる。
死に場所探しは難しい
実は、この手の長期療養型病院は全国各地に点在しており、中には系列の介護施設も含めて、
1、生活保護を受けている者
2、低所得にもかかわらず生活保護を受けていない者
3、経済的な理由で公的医療保険に加入していない者
4、多重債務による生活困窮者
5、ホームレス
6、配偶者からの暴力被害などを受けている者
7、人身取引被害者
などを受け入れている病院まである。
この場合、生活保護の申請などのほか、病院側や施設側が無料低額診療事業や無料低額介護老人保健施設利用事業などの制度を使って、入院や入所に必要な費用の全額免除や一部免除の手続きを事実上代行しているケースも少なくない。
当然、このような現実の反対側には、「老病で倒れたら死に場所を見つけることさえ難しくなる」という、もう一つの現実が横たわっている。だからこそ、この手の病院に対する需要は高く、かつ、病床は不足しているのである。