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2019/01/05

「彼らの前でカッコ悪い背中は見せられない」

 また、長野のおじさんランナーたちの好記録の理由として、もうひとつ牛山が挙げたのが「長野県縦断駅伝」という大会の存在だ。

「県縦断駅伝は長野県内の地域ごとに対抗して走る、県の名物駅伝です。今年で67回を数える歴史もあって、中学生から社会人までがタスキをつなぐ。高校生や大学生では都大路や箱根駅伝を走るようなランナーも多く参加しますし、レベルもなかなか高いですよ」

「全諏訪」チームの一員として長野県縦断駅伝を走った

 そこでの交流も大きな刺激になっているのだという。

「地域のチームなので中学生たちとも一緒に練習するんです。そうなるとおっさんとしても口だけで偉そうなことを言うわけにはいかないから、練習も必死です(笑)。彼らの前でカッコ悪い背中は見せられないですし、負けるわけにもいかない。

 特に最近は私の地域からは關(颯人、東海大3年)選手、名取(燎太、東海大2年)選手、中谷(雄飛、早大1年)選手のような日本学生界を代表するランナーも出てきている。彼らが中学生だった時なんかも、一緒に走りながら背中で伝えられるように頑張っていました。そういう部分はモチベーションになっていますね」

 そうして高いモチベーションで自分のやりたい練習を突き詰めた結果、若いころに自分の「限界」だと思っていた記録など、とうの昔に突破してしまったのだという。

「年齢も重ねたので、やっぱり衰えは感じますよ。朝起きられないし、風邪もひきやすくなった気がしますし。でも、なんでか記録は伸びてますねぇ(笑)。自分のカラダのことが分かってきたのかもしれないです。だからこそ、記録面でいえばまだまだ伸びると思います。市民ランナーでいる以上は、一番大事なのは“楽”に走ること。余裕を持って自分が楽しく走ることが何より重要だと思いますよ」

桃澤大祐選手は、今年の長野県縦断駅伝(4区)で区間新記録だった

なぜ、年を重ねてもこれだけの記録を出せるのか

 もうひとり、県内ではレジェンドと呼ばれるランナーがいる。それが今年47歳になる利根川裕雄(アルプスツール)だ。41歳の時にマークした5000mのベスト記録である14分15秒34は、41歳以上での日本記録でもある。47歳になった今年も、11月に14分56秒65と日本歴代最年長での14分台を記録してみせた。

「子育てが落ち着いた30代の後半くらいから一気に記録が伸びてきましたね。子どもたちと一緒の大会に出ることもあるので、そこでカッコ悪い姿は見せられないと思って(笑)」

利根川裕雄さん

 そう利根川は笑う。学生時代は中距離の選手で、長距離を始めたのは市民ランナーになってからだという。なぜ、年を重ねてもこれだけの記録を出せるのだろうか。

「やっぱり若い頃と違ってただ量をこなせばいいわけではない。自分の頭で考えて調子と相談しながら練習を組み立てることが重要なんだと思います。それが市民ランナーの面白さでもあると思いますから」