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医学部ランナー・広田有紀が、本気で東京五輪を目指す理由――2018下半期BEST5

彼女が日本中距離界のトップランナーになれた理由とは

2019/01/06

「金足農業旋風が、地元でもすごかったんです!」

 大学5年生、23歳になった今季は、これまでにないほど長期的に練習を積めているという。6月の日本選手権では自己記録をさらに更新し、4位入賞も果たした。

「今年からは病院での実習も始まり、病棟を回っているんです。やっぱり大会の翌日、朝から実習があるというのはなかなか大変です。でも、最近は患者さんが私が競技をやっていることを知って声をかけてくれるので、凄くそれが励みになる。『この後もちゃんと練習に行こう』という気持ちになりますね」

 今夏は嬉しいサプライズもあったという。

「甲子園の金足農業旋風が、地元でもすごかったんです! パブリックビューイングもそこら中でやっていて。駅前のビルに大きなテレビがあって、そこでみんなで見ていたんですけど、もう、みんなカッコよすぎて(笑)」

 

 そんな楽しみもある一方で、連日続く病院実習の合間を縫ってのトレーニングは、やはり時間のやりくりも難しい。それでも、広田は現状をプラスに捉えている。

「忙しくない時は、週に5日練習して水曜日と日曜日をレスト(休養)にあてています。実習だと終わる時間もばらばらなので、遅い日はレストになってしまったり、ジョグだけになってしまうこともあり、そこの調整はちょっと難しいかもしれません。でも、逆にいい休養になっているんだと思います。実習自体も疲れるので、練習は焦らずやっています。私は短期集中型で2時間くらいしか練習しないんです。そんなに時間をとらず、メリハリつけてやれているのが良いのかな」

「どの科に行っても陸上競技の経験は活かせそう」

 また、打ち込んできた陸上競技が、思わぬところで役に立つこともあるのだという。

「陸上をやっていたおかげで、知り合いも増えたし、人の相談に乗る機会も自然と増えた。そういう部分が最後は医療でも活きて来ると思いますし、人間性を高めるのにもいい経験になっていると思います。どの科に行っても陸上競技の経験は活かせそうなので、そちらもゆっくり考えていきたいですね」

 

 もちろん競技と学業を日本最高峰のレベルで両立することは簡単なことではない。どちらかひとつに絞れば必要のないはずの苦労もあるだろう。それでも、広田はこう言う。

「それぞれが良い“逃げ場”になっています。『勉強も陸上もやって大変だね』とよく言われますけど、こうやって逃げ道を作る方が、むしろ不安材料も減りますし。もちろん悩むこともありますけど、何か1つに打ち込んでも、それはそれで重い悩みもあるでしょうから、紛らわせる材料があるのはとてもいいことだなと思っています。学業でも、陸上でも、『もしこれ一本でやっていたら、正直きつかったなぁ』と思う瞬間はとても多いですよ」