追い詰められる中国は「逃げ切りたい」
ここまで、アメリカ側が考えていることを見てきましたが、中国側は何を考えているのでしょうか。中国の本心は「逃げ切りたい」、この一点につきるでしょう。国家資本主義的な体制で、自由貿易にのっかり大成長を遂げた国ですから、そこは譲りたくない。ですので、小手先で小さな譲歩はしていくでしょう。
現時点で見られる中国側の譲歩として、ハイテク企業を育てていこうという産業振興策「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」の内容の微調整などがあります。「メイド・イン・チャイナ2025」をトランプ政権内の安全保障グループが「中国がハイテク技術や軍事の覇権を一気に握ろうとしている」として問題化、名前がキャッチーなこともあって、米国のメディアがこぞって報じた。これを知った中国は、いま「メイド・イン・チャイナ2025」の文言を後退させる可能性を示しています。具体的には、達成目標を10年延期し、「2025年」ではなく、「2035年」をめどとする妥協案が議論されているといいます。
おもしろいことに、中国はこの頃、民主党関係者にも接触している。「あわよくばトランプ政権に終わって欲しい、民主党がんばってくれないかな」というところでしょう。ただ、民主党の支持基盤は労組。米国国内の労組も中国に対して良い感情をもっていないので、民主党が中国に乗っかるかというと、そんなことはない。中国を応援したいという人は米国にあまりいないんですよね。
今後の米中関係の行方を知るには、まず2019年1月に行われる、トランプ大統領による一般教書演説に注目したいところです。演説の中で中国をいかに悪く言うか、あるいは言わないかで、今後2、3年の対中政策の方向性が見えてくるでしょう。次に、3月に中国の全国人民代表大会での政府活動報告にどんな文言が入ってくるかも要注意です。
日本に期待される意外な役割
他にも、2019年は前出のWTO改革が動く年になるでしょう。G20が6月にありますが、ここでもWTO改革が議題に上るはずです。今年のG20は日本が議長国なので、安倍首相の腕の見せ所かもしれません。
というのも、今の中国にとっては安倍首相はトランプ大統領と話をすることができる人、アメリカへの「パイプ役」に見えている。加えて、参加する予定の首脳のうち、もう辞めることが決まっているドイツのメルケル首相を除いて、なんと安倍首相が最ベテランなんです。
日本が外交で一目置かれることってあまりないのですが、ここでうまく米中の架け橋になれれば、安倍首相の名前が後世に残るかもしれません。