いじめっ子役が来なくなると「たまにはやりたい」って思う
―― 社会現象にもなった『女王の教室』ではいじめっ子役でしたね。
伊藤 あそこからなんですよね、いじめっ子人生(笑)。
―― あはは。この頃、伊藤沙莉さんといえばいじめっ子役、ってくらいたくさんやられていましたね。周りから何か言われませんでしたか?
伊藤 あぁ、でもわかってる子は、「いじめんなよ」「この前万引きしてたなお前」とか冗談で言ってくれるから、逆によかったけど。わかんない子は書いちゃいますよね、ネットとかに。「沙莉ちゃんが何組の何々ちゃんを、主犯となっていじめてた」みたいな。何を見てそう思ったの? っていうこと、結構ありましたよ。いじめてるというイメージが勝手に一人歩きしちゃって。
―― やはり、いろいろ大変なんですね……。
伊藤 友達がちょっと他のクラスの子ともめて、話し合うからついてきてって言われて、私関わりたくないから廊下の壁によりかかって腕組んで見てたんですよ。それがたぶんリーダーっぽく見えちゃって、なんか指示出してるみたいに見られたみたいです。いじめっ子の役の構図を『女王』で解説すると、私と森本更紗さんがスネオ的立場で、「おーい!」みたいな感じでやって、ジャイアン的な梶原ひかりさんは、見てるだけみたいな感じが多いんですよ。だから私がジャイアンに見えたんでしょうね。やっぱりイメージって怖いなって思いましたね。とは思いつつも、そういう役が来なくなると、なんかそれはそれで、たまにはまたやりたいって思っていましたけど(笑)。
―― たまには、いじめたい(笑)。
伊藤 いじめってあってはならないことですけど、誰しもが少なからず持っている感情が噴出したものでもあると思うんです。そういうものを、自分の中から引っ張り出して演じるのはとても面白い。行定勲監督の『ナラタージュ』に、ホントにホントに0.5秒ぐらいなんですけど出演させていただいているんです。それが久々のいじめっ子役でした。いじめてる瞬間はなくて、有村(架純)さんがプールに落ちてビッチョビチョになってるところに、すれ違って笑ってるだけなんですけど。それだけでもすっごい楽しかった。
私にとっての執念の0.5秒
―― あの感覚が戻ってきたと。
伊藤 「久々、この感覚!」って。自分から遠い人をやればやるほど面白いんだろうなと思いました。自分に近い役って意外と難しい。逆に「あっ、こういう人いる!」っていう、客観的なものだったりすると、やってて楽しいというか、なんかモノマネしてる気分になって乗ってくるんです。それこそ小さい頃からやってたモノマネみたいに。
―― 『ナラタージュ』にカメオ出演されたのはどんな経緯だったんですか?
伊藤 普通にオーディション受けたんです。でもそのキャラクターは落ちてしまって別の役になったんです。行定監督からすると、一瞬しか映らない役だから伊藤は受けるはずがないと思いつつ、振ってくださったんですって。私は小学生の頃、行定監督の映画オーディションに何度も落とされてて、いつか絶対何かでご一緒したい、行定組の現場を体験したいと思ってたんです。『GO』がめちゃくちゃ好きでしたから。だから0.5秒だろうが、しがみついて役を演じるって思っていたんです。
―― 思いがすごい。
伊藤 だからエゴサして、「伊藤沙莉『ナラタージュ』一瞬出てた」とか書いてあると、「よしよし、見つけてるぞ」みたいにうれしくなっちゃう。私にとっての執念の0.5秒ですね(笑)。
◆伊藤さんの親友・松岡茉優さんとの衝撃の出会いとは?
#3 「女優は辞められない仕事」伊藤沙莉のデトックスは“親友・松岡茉優”
http://bunshun.jp/articles/-/4710 につづく
#1 デビューは9歳 “天才”伊藤沙莉が語る「ダウンタウン浜田さんに叩かれた“聖なるゾーン”」 http://bunshun.jp/articles/-/4708
写真=佐藤亘/文藝春秋
いとう・さいり/1994年千葉県生まれ。15年「TRANSIT GIRLS」(CX)に抜擢され、以降「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」(TX)」、「THE LAST COP/ラストコップ」(NTV)、連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)等、人気作への出演多数。17年主演映画「獣道」では主題歌も担当した。18年映画公開待機作に、「榎田貿易堂」(飯塚健監督)等がある。
◆伊藤さんが舞台『すべての四月のために』(作・演出 鄭義信)に出演します。11月11日〜29日まで東京芸術劇場プレイハウスにて。12月8日から13日までロームシアター京都サウスホールにて。12月22日〜24日まで北九州芸術劇場大ホールにて。詳しくはhttp://www.parco-play.com/