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山根会長ほか「アマチュアおじさん」大活躍――輝く!2018年おじさん大賞(前編)

プチ鹿島、鈴木涼美、おぐらりゅうじ、大嶋奈都子

note

もし山根元会長に「適応力」があれば……

鈴木 えーっ(笑)。どんどん垢抜けちゃったんですね。鶴木さんは、環境に適応しながら「空気を読める」おじさんだったんだ。

大嶋 それで、全くタイプが違う2人のメガネとサングラスを逆にしてみました(笑)。

下段の山根会長と鶴木さんが正解です

鹿島 もし山根さんに、その適応力があれば違う結末もあったかもしれない。そういう意味でもやっぱり「アマチュアおじさん」は変わらないんでしょうね。基本的に、観客を楽しませなくていいし、興行でお客を入れなくてもいい。だから「むき出し感」が全面に出ちゃう。

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大嶋 私は、山根さんの「おもてなしリスト」も気になりました。

おぐら 関係者の間で共有されていたという、山根会長を接待する際に注意すべきことが列挙されたリストですね。「ウナギやアナゴなど長いものは食べない」とか「車エビ大好き」とか。

おぐらりゅうじさん

大嶋 そうです。リストの冒頭に書かれている果物類が、バナナとかりんごとか、戦後の子供みたいな好みなんです。ぶどう、メロンと続いてアーモンドチョコ、森永ミルクキャラメル、と。

鹿島 あれは物悲しいです。山根会長の成りあがってきた歴史が、逆に出てしまいましたよね。

おぐら 女優さんで楽屋に加湿器は必須とかならわかるけど、さすがに「いかみりん」と「乾パン1缶」は聞いたことない。

鈴木 何なら水素水を常温で、みたいな(笑)。

大嶋 山根会長リストの最後には「揚げたての物は食べる」って(笑)。ものすごく気になりましたね。

「保護特区」を渇望します

鈴木 島根の“高校野球やくざ監督” 野々村直道さんは、山根さんとすごく雰囲気が似ていて。戸塚ヨットスクールの先生とも似ているし、予備校にも暴走族から明大に合格したっていう、代ゼミの吉野敬介先生がいました。口の悪いヤクザ系の先生って、ある意味で日本の風物詩でもありましたよね。

鈴木涼美さん

おぐら 女性役員が横領した金でルイ・ヴィトンを“爆買い”していたと報道された土木建築会社の社長も、アマチュアおじさんの雰囲気ありました。部屋には虎の敷物があって、喫煙しながらテレビの取材に応えたり。

鹿島 やんちゃも加わると、むしろ愛され系になる文化ってありますね。

鈴木 私が日経の記者時代に研修で出会った新聞の販売店社長にも、そういう人が多かったんですけど、男気があって優しい人たちなんですよ(笑)。私は、こういう人たちの「保護特区」を作らないといけない時期に来ているんじゃないかと思っていて。彼らは「もう俺たちの時代は終わった」って自虐的に言うんだけど、自分が悪いとは微塵も思っていないんですよ。

おぐら 文明社会と接触しないまま暮らしていた先住民が、いきなり外の世界の人間と接触すると、感染症などの病気になって滅んでしまうというのはよく言われる話です。

鹿島 あのおじさんたちも、裸のまま現代社会に出てきちゃった、みたいな感じですよね。

鈴木 そうそう(笑)。山根会長や野々村さんに対して、例えば今さらセクハラ講座を開いたり、ポリコレを学んでもらっても、すでに60代、70代の方々だし、研修をやったあと野に放ったところで残された時間は限られているじゃないですか。でも今の時代の流れとしてはどうしても取り締まられてしまうから、爪を抜くんじゃなくて、爪があるまま檻に入れておく「保護特区」を、私は渇望してます。

おぐら ポリコレとか一切通じないからこそ、ハラスメントも平気でする一方で、自分が気に入った人や身の回りの人たちは優遇するから、一定数の支持者が常にいるんですよね。