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「子どもが第一」という圧力を超えて、母親に産後ケアが必要な理由

「産後ケアをすべての家族に」マドレボニータ・吉岡マコインタビュー番外編

2019/01/10
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「自分の人生を生きていい」と気付いた

 千代田区から2か月の息子を連れて参加した女性(32歳、長女2歳)は、複数の友人がマドレボニータに参加している様子をFacebookに投稿しているのを見たこと、また助産師から産後は骨盤のゆがみをとるいい機会だと聞かされ、吉岡さんの本を見たことなどから参加した。「ここではシェアリングで大人の話ができます。『〇〇くんのママ』ではなくて一人の大人としていることができるということに病みつきになり、長男を妊娠した時はマタニティクラスから参加しました」と語った。

 

 文京区から4か月の息子を連れて参加した女性(30歳、長女2歳)も長女出産後の受講に続いて2回目の参加。「皆さんが自分の人生について考えていることを聞けたから、私も私の人生を歩んでいいと思い直せました。世間には『子どもを第一に考えないとダメ』という雰囲気があるけど、そうじゃなくていいと。自分の人生がまずあって、そこに子どもがいる、と思えるようになったのがよかったです」。

 約2時間のプログラムを終了し、参加者たちは赤ちゃんのオムツを替えたり、着替えたりして、そのまま帰る人もいれば、ランチに連れ立つ人たちもいた。

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産後は自分の生き方を振り返る貴重なチャンス

 マドレボニータの卒業生には、産後の母親の家事育児支援をする団体の事務局長や、子どもの病気についての知識を普及啓発する団体の代表など、社会貢献活動を始める人が多い。吉岡さんは「教室には今まで約5万5千人が参加しましたが、その人たちが単に元気になるというだけでなく、例えばその中から起業する人や、組織の中で重要な役割を担う人や、社会貢献する人が出てくることは、社会にとって大きなインパクトがあります。産後は自分の生き方を振り返る貴重なチャンス。それを活かせるようサポートするのが私たちの仕事です」と話す。

 

 子育てをしながら働く女性たちが急増する中、「産後」を女性たちがどう克服するか、社会や環境がどのようにサポートするかにアプローチしている団体はまだ限られている。マドレボニータの取り組みは、その難題に一つの答えを提示しようとしているように見えた。

「子どもが第一」という圧力を超えて、母親に産後ケアが必要な理由

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